文春オンライン

石橋貴明「太田、行くぞ。殴りこみだ!」共演者も客席もパニック…松本人志の一言が起こした“想定外の展開”

『笑っていいとも!』最終回から9年目の現在

note

 オスマン・サンコン、田中康夫、橋田壽賀子、神田利則、柳沢慎吾――。

 彼らには共通点がある。

『笑っていいとも!』(フジテレビ)にかつてレギュラー出演した経験がある人物とピンときた方は鋭い。だが、それだけではない。

ADVERTISEMENT

 その最終回の放送である「グランドフィナーレ 感謝の超特大号」で木梨憲武に無理やりステージに上げられた人たちだ。田中康夫に至っては、舞台に上がるやいなや、かつてビートたけしがそうされたように、爆笑問題・太田光から“襲撃”もされた。

『笑っていいとも!』(2002年撮影)©文藝春秋

松本人志の「奇跡」を起こした一言

 9年前の2014年3月31日に放送された「グランドフィナーレ」は、予定“不”調和がひとつの魅力だった『笑っていいとも!』を象徴するかのように、視聴者の予想をいい意味で裏切るカオスな展開が続出した。

 台本は、出番順が書かれただけの簡素なものだったという。吉永小百合のブロックの下に、明石家さんま、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンとあり、少し空けて、ナインティナイン、爆笑問題、とんねるず、笑福亭鶴瓶と書かれていた。それぞれ一組ずつ15分が与えられることになっていた。

 しかし、さんまとタモリの“雑談”が15分で終わるはずがない。約1時間近くにわたって往年の雑談芸が繰り広げられたのだ。

「長いわ!」

 話し続ける2人の間に浜田雅功がそう声を張り上げ、ダウンタウンとウッチャンナンチャンの盟友2組が“乱入”し、かつてのレギュラー出演者たちが座る客席は大きく沸いた。

 ここまではスタッフの想定内だったに違いない。しかし、松本人志が“奇跡”の引き金となる一言を発する。

「とんねるずが来たらネット荒れる!」

松本人志 ©文藝春秋

 とんねるずとダウンタウンとの“不仲説”はまことしやかに語られていた。実際には近い世代のライバル関係と、かつてはあったといわれる局内の“派閥”の力学などによって共演が少なかっただけだろう。それでも松本は巷で不仲説が囁かれているのを知っていた。だからあえて「とんねるず」と名前を挙げたのだろう。

 石橋貴明はその言葉を聞いた瞬間、スタンバイを始め、爆笑問題の楽屋に駆け込み鋭い眼光で言ったという(『爆笑問題カーボーイ』2014年4月1日)。

「太田、行くぞ。殴りこみだ!」

 それを受けマネージャーが木梨の楽屋に走ると既に木梨は準備万端だった。2人の気持ちは同じだった。石橋がスタジオに向かうとちょうど木梨の楽屋の扉が開き、2人並んで無言で歩き始めた。

 そして、とんねるず、次いで爆笑問題がステージに躍り出た。

 とんねるずとダウンタウンは“作られた不仲説”かもしれない。だが、ダウンタウンと爆笑問題の間に“確執”があったことは過去の言動などでも明らかだ。芸人たちが居並ぶ客席は「ええええ!」と自然と総立ちになった。

「もう一回言うけどネットが荒れる!」

太田光 ©文藝春秋

 爆笑問題の登場に松本が再び叫ぶと太田は「荒れろ、荒れろ!」と暴走。「え? 順番、順番は?」と楽屋でパニックになっていたナインティナインもこの混乱の輪に合流した。さらに中居正広や笑福亭鶴瓶もステージに上がり、「夢」だとか「奇跡」だとかという言葉がまったく大げさではない光景が広がっていた。

 それは『いいとも!』だから、何よりもタモリがそこにいるからこそ実現したものに違いない。