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2003年の日本

タモリが「あれを超える出来事はない」と断言…『Mステ』ドタキャン騒動の「t.A.T.u.」が“ロシアの希望”だったワケ

『Mステ』出演拒否の衝撃から20年

2023/01/02

genre : エンタメ, 音楽

「t.A.T.u.(タトゥー)が出たくねえと申しております」

 2003年6月27日、テレビ朝日系の音楽番組『ミュージックステーション』(以下、『Mステ』)のその日の放送も終わりに近づき、司会のタモリがそう伝えた。

 t.A.T.u.とは、レナとジュリア(当時いずれも18歳)というロシア人の少女デュオで、その2日前に初来日し、この日の生放送で歌うことになっていた。すでに日本でも人気が沸騰していただけにいやが上にも注目が集まる。

一向に現れないふたり

 しかし、夜7時54分に番組が始まり、オープニングにこそ登場したものの、何があったのか、途中でスタジオから姿を消してしまった。彼女たちは5番目に歌う予定だったが、不在のまま急遽、トリの予定だったロックバンドのミッシェル・ガン・エレファントが前倒しで登場する。同バンドはt.A.T.u.と同じユニバーサルミュージックに所属していた。

『200 KmH in the Wrong Lane』

 終わりがけになってもt.A.T.u.は一向に現れず、タモリがついに冒頭にあげた言葉を口にする。スタジオの出演アーティストたちは、むしろ生放送ならではのハプニングに沸いていた。タモリも苦笑しながら場をつなぐため冗談交じりでしゃべり続ける。

「何が悪いのかよくわかりません。(この日出演した)リップスライムがここ(と肘を指し)に何か書いてたなとか、私が(オープニングで)スカートのことを言ったんでムカッときたとか、いろんな話がありますけど。ここで1曲、私が歌うわけにもいかない。ちょっとのどの調子も悪いし。ようやくチャンスが回ってきたなと、デビューかなと思ったんでございますけどね。まだね、まだ少し時間、(間に合う)可能性がある」

タモリが「あれを超える出来事はない」

 このあと、タモリは「t.A.T.u.、いまなら間に合うぞー!」と呼びかけ、いったんCMに入る。が、結局、CMが明けても彼女たちは出てこなかった。このため、ミッシェル・ガン・エレファントがこの日2度目のパフォーマンスをセットのない状態で行い、スタジオは大盛り上がりとなる。ネット掲示板などでは、ミッシェル・ガン・エレファントはこのピンチを救った“神”と賞賛された。

 それにしても、改めて当時の映像を見返すと、タモリが『Mステ』では珍しくハイテンションになっていたことに驚かされる。2021年、同番組が「同一司会者による生放送音楽番組の最長放送」としてギネス世界記録に認定された際、彼が番組で一番印象的なできごとを訊かれ、《それはやはり、t.A.T.u.でしょう(笑い)! あれは忘れられないですし、あれを超える出来事はないでしょうね……》とコメントしたのも当然だろう(「MANTAN WEB」2021年10月14日配信)。