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「シーズン中もよく三振もしますし、エラーもします。ただそれがWBCの中で出て、目立ってしまった。もちろん調子がいいのか、悪いのかで言ったら悪い方だったんですけど、チームの皆さんに助けられたし、監督のひとことで救われた。本当に周りのありがたさ、チームの団結を凄く感じました」

 ホームを駆け抜けたために、その輪に出遅れた大谷が、最後の最後に村上を見つけるとラーズ・ヌートバー外野手と3人で固く抱き合った。

サヨナラ勝ちが決まった瞬間、村上に集まる侍ジャパン ©時事通信社

村上「小さい頃にイチローさんのタイムリーを見て…」

「野球ってスゲ~なって思っていただけたら嬉しいです」

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 試合後の記者会見。涙で目を赤くしながらこう語った栗山監督は、劇的な主砲の復活劇にもこう涙した。

「最後打ちましたけど、たぶん本人の中ではチームに迷惑かけている感じしかないんじゃないかな。世界がビックリするバッターであると僕はWBCで証明したいと思ってやってきた。まだまだあんなもんじゃない。最後、お前で勝つんだとずっと言ってきた。僕は信じています」

 そんな信頼が生んだサヨナラ二塁打であり、まさかまさかの逆転サヨナラ決勝進出劇だった。

「小さい頃にイチローさんのタイムリーを見たときに、このWBCで活躍するっていう思いがあったので、最高の一撃になりました」

 村上がこう語ったイチローさんのタイムリーは、14年前の2009年の第2回大会決勝の韓国戦だった。筆者は第1回大会からWBCを取材しているが、あの時のイチローさんも本大会に入ると、ずっとスランプに苦しみ、苦しみ抜いて、最後に放ったのがあの一撃だったのである。まさに沼からの脱出はスターらしいド派手なタイムリーだった。

 そんなイチローさんと同じ匂いが、今大会の村上にもする。ならば決勝戦でも――復活した史上最年少の三冠王のバットに期待が膨らむ。