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“髙橋宏斗大好き”な鈴木敏夫プロデューサーが語るジブリパークとドラゴンズの知られざる関係

文春野球コラム オープン戦2023

2023/03/27
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立浪監督には気持ちが奮い立つ言葉の発信に期待

 2022年シーズンはドラゴンズファンにとって“暗黒時代”にケリをつける年になる――そんなふうに期待していたファンも多かったはず。“3代目ミスタードラゴンズ”立浪和義が監督としてチームに復帰。しかし、結果は最下位。鈴木さんは立浪監督の手腕を手厳しく振り返る。

「監督は沈着冷静に、いいことが起きたときには渋い顔をして、悪いときにはニコニコしているぐらいの器がなくちゃいけないと思う。昨年の京田陽太の“強制送還”のときも、試合が終わってから彼を怒って、そのあとにきちんとケアをしてあげるぐらいの気持ちでいないと。厳しさも必要だけど、選手をその気にさせる振る舞いも必要でしょう」

 そんな鈴木さんには草野球の監督の言葉や振る舞いにまつわる思い出がある。鈴木さんは30代のころ、草野球チームに入り、プレーに熱中していた時期があった。ある時、チームのエースピッチャーが故障して投げられなくなってしまった。大事な試合が近づくなか、チームの監督は鈴木さんに「トシちゃん投げろよ。毎日フォークの練習しよう」とささやいた。

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「僕は指が短いから球を挟めないし無理ですよと話したんだけど、毎日1時間、監督と一緒に練習したんです。監督は『落ちた落ちた』っておだててくれる。落ちてるわけないんですよ。でも実際に試合で投げてみたら打者の外角低めに面白いようにボールが決まって、内野ゴロの山。気持ちよかったなあ。こんなふうに投げられたのは、監督の声がけのおかげです」

 監督の言葉が選手を奮い立たせた好例といえよう。また、東京ヤクルトスワローズの高津臣吾監督が「絶対大丈夫」の声がけで選手を勇気づけ優勝に導いたのは周知の事実。落合博満氏も、ドラゴンズ監督時代にはたった一言でも、聞き手に考えさせる言葉を発してきた。監督の言葉は選手や周囲に多大な影響を与えるわけだが、鈴木さんと筆者の間で一致したのは「立浪監督、背中で語りがち」ということ。今シーズンの立浪監督には、ぜひ選手の気持ちもファンの気持ちも奮い立たせる言葉の発信に期待したい。

ジブリパークの言い出しっぺは白井文吾前オーナー!?

 ところで、スタジオジブリ作品の世界が体感できるテーマパーク「ジブリパーク」が昨年11月に開業。以前のインタビューで鈴木さんは「ドラゴンズが優勝して、ジブリパークも開業して、そうして一緒に盛り上げていけたらいいですね」と語っていた。ジブリパークは開業以来、来場客がひっきりなし。「ゆっくりきて下さい」と言われても早く行きたいという人が、我先にと入場券を求めようとしている人気ぶりだ。ジブリパークはスタジオジブリと、ドラゴンズのオーナー企業である中日新聞社、愛知県の三者によって整備・運営されている。鈴木さんは「じつはジブリパークの言い出しっぺは、ドラゴンズの白井文吾前オーナーなんですよ」と、思いもよらない話をしてくれた。

「スタジオジブリはこれまでいろんな展示を行ってきたんですが、展示物はいろんな倉庫に預けていました。それを聞いた白井さんが『一箇所に集めたらどう?』と提案してくれた。ジブリパークの企画はこれをきっかけに始まったんです。展示物を集めた『ジブリの大倉庫』という施設の名前はその名残り。ちなみに落合博満さんから『あの人は信頼できる』と聞いていたので、それも大きかったですね」

 翻ってドラゴンズのこの春の成績は、侍ジャパンとの壮行試合は大奮闘。オープン戦も当初は低調ぶりが目立ったが、終わってみれば11年ぶりに勝ち越してフィニッシュ。ルーキー・福永裕基が開幕スタメンを確実にするなど、シーズンに入ってからも楽しみな要素も増えてきている。今年のドラゴンズは勝てますかね? そう鈴木さんに問うと「10%の底上げがあれば」という、以前にどこかで聞いたフレーズが飛び出した。

「昨年は途中から若手の起用をやったわけで、これはここ数年あまりなかった。そのなかで土田龍空などいい選手が育ったじゃないですか。引き続きその選手たちを伸ばしてほしいですよね。その選手たちの力が10%でも増えれば、強いチームになる可能性はあります」

 3月31日、いよいよ2023年シーズンの幕が上がる。鈴木さんは「選手の皆さんがんばってください。面白い試合をやってほしい」と、エールを贈る。そして「優勝して、シーズン後には気持ちよく話せるといいな」と3度目のインタビュー登板にも意欲をみせてくれた。

 

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