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「基本的な機能ができない。信じられませんでした」
沖電気の修理担当者だったA氏が証言する。
「モジュール(部品)一つ一つは機能していたのですが、システムとして組み上げると、データの伝送が実行できなかったのです。敵艦の音を探知しても、0か1のデジタル信号に変換して送信するという最も基本的な機能ができない。電車で言えば、1両ずつなら動いても、連結して16両編成になると動かない――そんなイメージです。いくら試作品とはいえ、巨額の税金も投入されている事業に、ソーナーとは呼び難い代物を納入していたことが信じられませんでした」
以降、以降、A氏らは修理作業ををイチから続けたという。なかなか状況が改善しない中、2020年12月、A氏が捻り出したのが、新たな方法だった。
「私が考えたのは、伝送路の途中に中継基板を挿入することで、データの歪みやズレを解消しようという方法です。突貫的な対策でしたが、功を奏したのか、ようやくソーナーはシステムとして機能するようになりました」(同前)
その後、沖電気は海上自衛隊が2021年2月9日に発注した「曳航型アレイの性能試験等に係わる契約」を落札。受注額は2億7610万円で随意契約だった。3月から4月にかけて、性能試験が行われ、合格に至ったという。
沖電気工業広報室に事実確認を求めたところ、個別の質問には答えず、以下のように回答した。
「ご指摘のような品質不正はございません。当社は防衛省ガイドラインを遵守し、OKI社内ルールにも沿って厳格な運用をしております。当社と防衛省の間には守秘義務契約があり、内容についてはご回答できません」