トランプ政権の「鼻血作戦」を否定して大使人事取り消し
米国は、北朝鮮が人民軍創建日を2月8日に変更すると宣言してから、北朝鮮に対してより強硬な態度を示し続けてきた。
1月末には、韓国からアグレマン(当事国の任命同意)までとっていた駐韓米国大使の人事を反故にし、2月8日に訪韓したペンス米副大統領はオリンピックの開会式前に、脱北者4名と平沢にある「天安艦記念館」を訪れた。「天安」は韓国海軍の哨戒艦で、2010年3月26日、北朝鮮の魚雷攻撃に遭い沈没。この「韓国哨戒艦沈没事件」では、韓国は兵士・民間人合わせて56人の犠牲者を出している。ペンス副大統領の狙いは、いずれも北朝鮮の人権問題や好戦性を際立たせるためといわれる。
「駐韓米国大使に内定していた、韓国系米国人で北朝鮮専門家のビクター・チャ戦略国際問題研究所朝鮮部長は、トランプ政権の『鼻血作戦』を論説で否定したことで内定が取り消されたと囁かれています。
この鼻血作戦が急浮上した背景には、北朝鮮が核と弾道ミサイルを完成させるレッドラインを踏む可能性が近づいたためと言われていて、2月8日の軍事パレードを米国はどう分析したのか……」(同前)
鼻血作戦は、その名の通り、鼻血を出す程度の一発のパンチを与え、こちら側の意思を知らしめる作戦で、例えばミサイル発射台などをピンポイントで攻撃するものだ。1月30日にチャ氏の人事が撤回されたと報道されると、韓国では「米国はいよいよ先制攻撃するのではないか」とちょっとした騒ぎとなった。実際、ソウル在住の知り合いの中には、「大丈夫だろうと止めていた備蓄を再び始めた」(40代会社員)という人もいた。
「開会式のテープを切りに行くのではない」と豪語していたペンス副大統領は、日本と韓国の前に訪問したアラスカでは、「何が起きるか見守ろう」と含みを持たせた発言をしており、金与正第一副部長が北朝鮮へ帰国する11日まで予断を許さない。
南北対話の突破口になるか
一方、韓国の文在寅大統領は、10日に金与正第一副部長と昼食を共にして会談することが発表された。
進歩系新聞社の記者が語る。
「ここでの対話がこれからの南北、ひいては米国と北朝鮮の関係を左右するともいわれ、韓国政府はなんとしても次の金正恩委員長との第3回南北首脳会談につなげたい」
開会式に出席するため2月9日に訪韓した安倍首相は、この日の午後、さっそく文大統領と会談を行う。開幕式前にはレセプションが用意されているが、そこで金与正第一副部長と遭遇し、言葉を交すことにもなるのだろうか。