車を降りた瞬間、体が氷結した。

 その日は雲一つない快晴だったが、気温は零下14度! ところどころに残っていた雪が、強風で粉雪となってクルクルと舞っていた。

大関嶺面の街中 撮影/筆者

 2018年、韓国で最大のトピックは、なんといっても来月9日から始まる平昌(ピョンチャン)オリンピックだ。

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「盛り上がらない」と言われ続けながら2018年に突入したが、年明けから、「2018年は平昌オリンピックの年」と五輪関連の報道が格段に増えている。

 昨年暮れに訪ねた大関嶺面(テグァンリョンミョン)は、開・閉幕式が行われるメインスタジアムがあり、スキージャンプなどの会場となる平昌オリンピックの中心地。期間中、オリンピック組織委員会をはじめ、プレスセンターなどが設置される。そんな、開催が直前に迫った現地をルポする。

来賓や観客はこの寒さに耐えられるのか

 レンタルスキーショップに急いで滑り込むと、現れた店主はTシャツ1枚という出で立ちだった。えーっ、と仰天しつつも、店内を見回すと、スキー板やボード、ダウンジャケットなどのスキー用品が整然と並んでいた。さっそくオリンピックについて尋ねてみた。

「うーん、国内のスキー客はオリンピックで減るから、商売柄、得するよりも損するほうだけど、地元で世界のイベントが開催されるんだから、それはうれしいよ。そろそろ人も集まってきているしさ。ああ、いよいよオリンピックが近いんだなあって実感が湧いてきています」

 少しぶっきらぼうな口調だったが、オリンピックを前に高揚している様子がじんわりと伝わってきた。

 それにしても、店内に入っても体から寒さが消えない。ともかく寒い。いや、冷たい……。

開・閉幕式が行われるメインスタジアム 撮影/筆者

 昨年11月にメインスタジアムで行われた「開幕100日前」のイベントでは低体温症で倒れる人が出た。そのため、11月よりも気温が下がる2月の寒さに、しかも夜8時からの開幕式に来賓や観客は耐えられるのかと韓国でも憂慮する声が上がっている。

 そんな話を振ってみると、

「防寒のための毛布も配るって言っているし、いろいろ対策を練っているそうだから大丈夫でしょう」

 と店主は苦笑する。

 そんなTシャツ姿の店主とは対照的に、オリンピックをにらんで韓国南部の麗水(ヨス)からアルバイトに来ていた学生は、店内でもダウンジャケットを着込んだ完全防寒装備だった。店主にいくらなんでもそんな格好で寒くないのかと訊くと、アルバイトの大学生をちらりと見ながら、「寒さは慣れですから」ときっぱり言われた。