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ベイスターズの“もやもや”は晴れるか? 牧秀悟の“切り替え”と今永昇太の“自分を許す感覚”に期待

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/04/06
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目標達成への具体策を説いた伊藤光

 一方チーム内には、選手同士での自発的なミーティングによって、気づいた事を伝え、目指す方向を確かめ合う動きもあります。気持ちを切り替えたなら、次は具体的な方法を共有します。

 3月12日の試合後、伊藤光捕手は若手のバッテリーを中心に思う事を伝えました。

 去年ベイスターズのチーム防御率はリーグ3位の3.48。一昨年の4.15から飛躍的に良化しました。それでも両リーグを通じて一番数字が良いタイガース投手陣の防御率は2.67と大きな差が。要因はフォアボールの数と伊藤捕手は見ています。「タイガース投手陣が、去年1試合平均で与えた(申告敬遠を除く)フォアボールは2つほど。他のセ・リーグ5球団は総じて3つ弱(ベイスターズは2.9)。タイガース投手陣が与えたフォアボールが他のチームより1試合当たり1つ少ない」と。

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 チーム目標の一つ、3球目までに打者を追い込むことができればフォアボールの確率も減ります。3球投げて1ボール2ストライクのカウントにするために問われるのは『初球の質』。

「初球で打者が見逃しストライク、もしくは振ってもらえる有効なボールになれば、勝負は優位になる。楽に見逃されるボール球ではもったいない。初球を大事に考えて欲しい」と伊藤捕手は目標達成への具体策を説きました。

 初球が勝負を左右することは、多くの投手達にも浸透しています。濵口遥大投手は「初球で打者が何らかの反応をするボールを投げられれば、その勝負は支配しやすい」と話し、東克樹投手は「初球を投じた時、打者が驚いた表情でこちらを見てくれると、思わずありがとう!の気分になります」と言いました。

コーチ発案の特製クッション型スイッチ

 まだ時々、気持ちの切り替えが上手でない選手たちを目の当たりにしたスタッフも、アイディアを凝らします。開幕直前、横浜スタジアムでの練習日、遠藤拓哉メンタルスキルコーチの発案で直径30cm程の特製クッションが、ベンチへの入り口にシーズンを通して置かれる様になりました。上手く行かなかった時に気持ちを切り替えるためのスイッチで、ポンと叩いた瞬間に、後悔を忘れて前に進む約束です。

三浦監督と遠藤コーチが手にする切り替えスイッチ ©吉井祥博

 このクッション型スイッチ、放送席にも置きたくなってしまいました。ベイスターズ戦の中継の最中、もしマイクを通して「ポス、ポス」と小さな音が聞こえたら、実況中の失敗を切り替えている時かもしれません……。

 今年の春季キャンプは3年ぶりにコロナ禍前と同様、練習後の選手たちに直接お話を伺う環境が許されました。苦しい時に立ち向かうための道標を、すでに選手一人一人が知っていると実感しています。その取り組みが具体的な結果になって現れるには、もう少し時間が必要なのかもしれません。ベイスターズは去年、思い通りにいかないスタートを跳ね返し、夏場に一体となって戦う雰囲気を作れました。気持ちの切り替えが成熟すれば、今シーズンの戦いが進む中で、雰囲気が自信へと育つはず。

 きっと、今日も確かな一歩をお伝えできると信じ、また実況席に向かいます。

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