福岡県の老舗旅館「大丸別荘」が浴場の湯を年2回しか取り換えていなかった問題。福岡県警は4月18日、運営会社と亡くなった山田眞・前社長を公衆浴場法違反の疑いで書類送検したことがわかった。運営会社は調べに対し容疑を認めているという。

 県警の捜査が続いていた今年3月、山田前社長が遺書のようなものを残し、亡くなった。自殺と見られている。老舗旅館で一体何が起きていたのか。事件発覚直後に「週刊文春」が社長(当時)をインタビューした記事を再公開する(初出:「週刊文春」2023年3月9日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)。

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「ちょっと甘く見ていました。お客様には申し訳ない。全て私の怠慢です……」

 消え入るような声で小誌記者に語るのは、福岡県筑紫野市の温泉旅館「二日市温泉 大丸別荘」の五代目社長(取材当時、3月2日に辞任を発表)・山田眞氏(70)だ。

大丸別荘の山田社長

◆ ◆ ◆

二日市温泉の利用客が体調不良を訴え、『レジオネラ症』と診断される

 二日市温泉は奈良時代から約1300年続く古湯で、「大丸別荘」は幕末の1865年に創業。約2万1500百㎡の敷地に約1万㎡の日本庭園が広がる高級旅館だ。

「“博多の奥座敷”と呼ばれる温泉郷の顔といえる旅館で、1泊2万〜4万円ほど。昭和天皇をはじめ、岸信介元首相や美空ひばり、吉永小百合など各界の著名人が宿泊したことでも知られます」(地元紙記者)

日本庭園は山田社長自ら設計

 そんな老舗宿の信用を揺るがす問題が発覚したのは2022年8月のこと。経緯について福岡県筑紫保健福祉環境事務所(以下、県保健所)の担当者が語る。

「二日市温泉の利用客が体調不良を訴え、医療機関で検査した結果、『レジオネラ症』と診断された。そこで大丸別荘の浴場にも立ち入り検査をしたところ、基準値の2倍のレジオネラ属菌が検出されたのです」

 この細菌は河川や温泉などに生息。レジオネラ症の症状は発熱や悪寒で、重症の場合は肺炎になるという。