録音された音声を聞いてみる
そして、現地でカセットテープを再生した。内容は……想像した通りのものだった。社長の反論が収められていないかと期待したが、聞こえてくるのは会長の声だけだった。そのほとんどが、罵声や叱責する内容だった。全部で4本のテープを聞いた。時間にしておよそ2時間程度、ずっと怒られているようで、非常に気が滅入った。
廃墟にレコーダーを持ち込んでテープを再生し、その結果、自分の気が滅入る。廃墟でいったい何をしているのかという気持ちにもなるが、聞いてみなければテープの内容は分からない。分からないという状況が、一番モヤモヤする。気は滅入ったが、モヤモヤは解消された。
岐阜県某所の山の上に作られた遊園地。国鉄の駅から移築されたトイレ、山の生物が多い動物園、ゴーカートの近くに茶室と、一貫性が無いようにもみえる。しかし、それは会長の理想郷だったのかもしれない。夢を現実のものにしたが、その代償として会社は傾き、会長と社長、親族間の関係も悪化してゆく。廃墟から、そんな人間模様も垣間見える。
廃墟はただ外観を眺めるだけでも楽しいが、内情を知れば知るほど、よりリアリティさが増してくる。そして、廃墟には必ず人が関わっている。人が関わっているからこそ楽しく、そして悲しい。それが廃墟探索の醍醐味ではないかと思う。
最後にもう一度『映画(窒息)』 のことに触れておきたい。この映画の撮影がなければ、この廃墟に触れることは叶わなかった。
廃墟が好きで、数奇なご縁から映画関係者と繋がり、そして廃墟に渦巻く人間模様を垣間見ることができた。『映画(窒息)』の関係者、そしてこの廃墟を管理する関係者の皆様に、心から感謝を申し上げたい。
※この廃墟は厳重に管理されており、関係者以外の立ち入りが禁止されています。くれぐれも無断で立ち入らないで下さい。
写真=鹿取茂雄
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