5月6日、英国チャールズ国王の戴冠式が執り行われる。ヘンリー王子の衝撃的な回顧録『SPARE』が物議をかもし、英国王室への批判の声が高まるなか、この慶事に際して英国国民はどのような反応を見せるのだろうか。

  2011年4月、ウィリアム王子(当時)とキャサリン妃の結婚式が行われた当時、NHK特別番組での解説のために現地を訪れ、その様子を目の当たりにした君塚直隆氏(関東学院大学国際文化学部教授)の寄稿「ロイヤル・ウェディング」を紹介する。(「文藝春秋」2011年7月号より、敬称や日付などは掲載当時のまま)

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王室の慶事に「2つの気がかり」

 去る4月29日、英国王室のウィリアム王子とキャサリン・ミドルトン嬢の結婚式がロンドンのウェストミンスター寺院において厳かに執り行われた。

 筆者はこの結婚式を生中継で放映したBS-1(NHK)の特別番組にゲスト解説者として出演する機会に恵まれた。英国王室を少なからぬ年月にわたり研究してきたとはいえ、このような慶事に直に接するのは初めての経験であった。

2011年4月29日、結婚の日を迎えた当時のウィリアム王子とキャサリン妃 ©AFP=時事

 式典2日前の27日にロンドンに到着した筆者には2つの気がかりがあった。

 ひとつはこの世紀の大典を日本の方々にきちんとお伝えできるかということだった。

 東日本大震災の爪痕もくっきりと残っているこのご時世に、外国王室の慶事を伝えて良いものだろうか。番組を担当されたNHKのスタッフの方々もこの点は十分に検討したうえで、あえて放映に踏み切られたようである。

 筆者も、大震災発生直後に、いの一番に天皇陛下に激励のメッセージを送ってくださったエリザベス2世女王とチャールズ皇太子の慶事を日本国民として感謝の気持ちを込めつつ報道すべきではないかとかねてより思っていた。

エリザベス女王 ©時事通信社

「結婚式は地味めに行うべき」の声

 そしてもうひとつの気がかり。それは他ならぬ英国国民の反応だった。

 今からちょうど30年前、1981年7月にウィリアム王子の両親であるチャールズ皇太子と故ダイアナ妃の盛大な結婚式が行われた。当時の英国は失業者も270万人を超え、経済もどん底状態にあった。それでも国民の67パーセントが王室のためなら税金は出し惜しみしないと述べ、この慶賀を共に祝った。

 今回の式典も、30年前と同様に、経済がどん底状態のなかでの挙行となる。しかも30年前とは異なり、結婚式は地味めに行うべきであり、費用も王室とミドルトン家とで捻出すべきだとの声が国民の間では圧倒的に多かった。