「20秒ほどの動画に映るルイスは、エレベーターに乗り込むと笑いながら鏡に近づき、ボディービルダーのように上腕の筋肉をアピール。首を振ると何かを呟きます。その後、シャドーボクシングのように右手で空を殴る仕草をし、また笑います。まるで犯行のイメージトレーニングのようにも見えますし、正常な精神状態でないようにも見える。映像は犯人の不気味さに一層拍車をかけています」(同前)
ルイスのSNSはボルソナロ前大統領を賞賛する投稿で溢れていた
ルイスは何を思い、鏡に映る自分に微笑みかけたのか――。事件がブラジルのみならず、南米全土で波紋を広げている背景にはルイスの政治思想もあるようだ。前出の「ラ・ガセタ」は、ルイスの人物像を「ネオナチ」という強い表現を用いて詳報している。
その一端をブラジルの政治評論家ロニー・テレス氏が明らかにしている。彼は事件発生後にツイッター上で、「ルイスのSNSはボルソナロ前大統領を賞賛する投稿で溢れていた」と指摘している。ボルソナロ氏は「極右」「ポピュリスト」とも評されるいわくつきの政治家だ。
「ボルソナロ氏は昨年10月に行われた大統領選挙で、現職大統領のルラ氏に敗れています。その後、ボルソナロ氏の支持者が大統領府などを襲撃する事件が発生し、ボルソナロ氏も捜査対象となっています。アメリカの連邦議会を暴徒たちが襲ったあの事件に似ていますよね。ボルソナロ氏は『ブラジルのトランプ(前アメリカ大統領)』と呼ばれる人物なのです」(在ブラジルジャーナリスト)
波紋を広げる保育園襲撃事件は空前絶後の蛮行かと思いきや、そうではないらしい。「G1」が伝えるところによると、学校や保育園で発生した襲撃や殺人事件は2011年以降で、少なくとも12件ある。ルイスが保育園を襲撃するわずか1週間前、サンパウロ州の学校で生徒が教師を刺し殺す事件が発生したばかりだった。
ブラジルには、警備面を強化するといったありきたりな対策だけでは解決できない、根深い闇があるようだ。