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「殺しだ、あいつは殺しに来た」

 だが、男の目的は強盗などではなかった。カメラを前にしたシモーネさんの声は涙で震えていた。

「その後、また同僚が駆けてきて、『殺しだ、あいつは殺しにきた』と言うのです。男は物騒な武器を持っていました。あの時、就学前の小さな子ども達が中庭で遊んでいたのに……」

抱きかかえられて避難する園児(ブラジル現地ニュース「G1」より)

出頭して逮捕された男の前科

 ブラジル全土を震撼させた凶行に走った男は一体何者だったのか。

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「その後、バイク配達業者として働いていた25歳のルイス・エンリケ・デ・リマという男が警察に出頭し逮捕されています。ルイスはブラジル南部のパラナ州サルト・ド・ロントラの出身で、事件を起こした保育園のあるブルメナウ居住だといいます。ブラジル現地メディア『レコール』などが伝えるところによると、出頭時にルイスは『黙っていた』といいます」(前出・全国紙国際部記者)

逮捕されたルイス・エンリケ・デ・リマ(ニュースサイト「R7」より)

 司法当局はこの事件を「突発的かつ孤立した男の犯行」と見立て、スマートフォンやSNSの投稿を通じ、ルイスの心理面の分析も進めているという。これまでのところ、犯行動機は明らかになっていないが、暴力と薬物に関する前科が手掛かりとなるかもしれない。

 アルゼンチン現地メディア「ラ・ガセタ」が、ブラジルのサンタカタリーナ州警察当局が明かしたルイスの前科を伝えている。いわく、ナイトクラブでの乱闘(2016年)、継父を刺す(21年)、コカイン所持(22年)、継父の自宅を破壊したのち、継父の犬を刺す(同年)――といった内容で、きわめて攻撃的な性格であったことが窺える。

 その性格から、暴力への衝動を抑えられなかったのだろうか。保育園での凶行に至る前日の4月4日午後6時45分ごろ、エレベーターの防犯カメラが撮影していたルイスの“奇行”が注目を集めている。