4月27日、新宿歌舞伎町のホストクラブに勤務する、源氏名「森のくまさん」こと江川誉容疑者(25)が逮捕された。容疑は売春防止法違反。ホストクラブの女性客であるA子さん(23)に、“立ちんぼ”行為をそそのかした疑いがかけられている。

 これまで「文春オンライン」は、“歌舞伎町女子”が被害に遭った事件や、彼女らがさらされている危険な実態をたびたび報じてきた。その根にあるのは、ホストやコンカフェ店員などへの度を越えた貢ぎ行為だ。彼女らは時として強要され、あるいは自ら、“推し”に多額の金を貢ぐために違法売春などに手を染め、身を持ち崩している。

 歌舞伎町に蔓延る女性を標的にした危険なビジネスとは――。過去の記事を再公開する(初出:2023年2月4日。肩書、年齢は当時のまま)。

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「ホストに売掛(≒ツケ)で貢いだお金が払えなくなったことを伝えたら、それまで優しかったホストの表情が一変したんです。『お前が今着てるそれ、ブランドもんだろ。売ってこいよ』と首元を掴んで質屋まで連れていかれました。抵抗しても『早く脱げよ』と顔面を殴られて、道端で泣きながら服を脱ぎました。身ぐるみ剥がされ、コートもスカートも靴も、その日の所持品を全部で20万円で売られました。歌舞伎町にあんなにたくさん質屋がある理由がやっとわかりました……」

 6年間で1000万円以上を新宿・歌舞伎町のホストクラブで使ったA子さんを待っていたのは、質屋で持ち物をすべて売られるという最悪の結末だった。

歌舞伎町にたちならぶホストクラブの看板。これは「沼」への誘いなのか… ©文藝春秋

 日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町。飲食店や様々な遊戯施設が立ち並ぶ街には、“眠らない質屋”も数多く存在する。その多くがキャバクラやホストクラブ、最近では“推し”に貢ぐ人々に利用されているという。

質屋を訪れる人の目的は、大半が“貢ぎ”

 現在、歌舞伎町周辺に存在する質屋は15店舗以上。ブランドバッグや高級時計などを“質草”(≒担保)として店に預けることで、その価格に応じた現金をすぐに受け取ることができる。期限までにお金を返せば品物は返ってくるが、お金が払えなければ品物は質屋に取られてしまう。

 プロミスやアイフルなどの消費者金融が普及したことで全国的には減少傾向の質屋だが、歌舞伎町ではむしろ増えているという。すぐにお金を借りられる手軽さが、歌舞伎町で生活する人たちのニーズにぴったりハマっているのだ。歌舞伎町のとある質屋の従業員はこう話す。

歌舞伎町には数多くの質屋がひしめいている。その用途は様々 ©文藝春秋

「一般的な質屋では金利が5%ですが、歌舞伎町の質屋は競争が激しいので金利が1%のところがほとんど。この街は水商売や日払いの仕事をされている方が多いので、突発的にお金が必要になるケースもあり、短期間で低金利の質預けを利用される方が多いです」

 県外から生活費のために高級ブランドを換金しようと訪れる利用者もいるが、地下アイドルやコンセプトカフェの“推し”に貢ぐためという人が圧倒的に多数派だという。従業員が続ける。

「女性が焦った様子で店内に入って来て『これ2万でもいいから』と指輪の審査を依頼されたことがあります。ブランド物でもなく古かったのでお断りしたのですが『どうしても今日シャンパンを入れてあげたいの!』としばらくごねられました。どうやらお気に入りのホストの誕生日だったみたいです。聞けば親御さんの形見の指輪ということで、なおさら預かれませんと断りました。それでも女性は持っていた財布とカバンを預けてお金を持ってホストクラブの方へ消えていきました」