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黒田博樹さんから言われた「ここにいちゃダメだろ」 広島・大道温貴が腕を振り続ける理由

文春野球コラム ペナントレース2023

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「(大道)温貴って挫折とかあった?」

 電話でふと聞いてみました。

 今から読んでいただく文章はすべて大道投手の声に変換して読んでください。

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大道温貴©時事通信社

挫折ですか? 高校生活では高校3年の夏以外全部です

 野球を始めたのは、小学2年生のとき、ひとつ上の兄が野球やりたいって言い出して僕も一緒に始めました。その瞬間から兄に負けないようにと、ライバルは兄貴でした。小中高とずっと同じ学校、同じ野球部で一緒だったんです。

 僕は最初からピッチャー1本だったって訳ではなく、小学生の頃はサードをやったり、キャッチャーをやったり色んなポジションをやっていました。それから中学に上がって元々肩が強かったのもあってピッチャーやってみろって。なんとなくその頃までは良い感じだった気がします。でも高校に入ってから初めて硬式のボールを使うことになり、周りのレベルの高さを感じました。こんなに厳しいんだって。

 悔しくて、あーこんなもんかって気持ちになりかけたときもありますが、そんな時も心にずっと置いていた言葉があります。それは中学時代の野球部の恩師だった坂本先生から貰った言葉『不動心』でした。打たれても落ち込んだりせず顔を上げ、抑えても冷静に、活躍しても調子に乗らない。周りに見せる姿勢を常に意識しました。今使っているグローブにも“不動心”と刺繍を入れてるんですが、これまでの人生でいくつか作ってきたグローブには全部に必ず入れています。

 そして高校野球、最後の夏には現チームメイトの高橋昂也と埼玉予選で当たるんです。僕は春日部共栄高校で昂也は花咲徳栄高校。すごく良いピッチャーだったので1点取られたら負けるだろうなって思いながら投げました。結果僕たちのチームは敗れてしまうんですが、当時の試合のことは今もまだ鮮明に覚えていますよ。

©ゴッホ向井ブルー

「お前は死ぬまで腕を振っていけ」

 プロに入ってからの僕は1年目から1軍のマウンドに立つことができました。先発中継ぎ合わせて24試合に登板し、4勝4敗です。

 1年目は常に大地さん(大瀬良大地)が気にかけてくれて、一軍にいたときもよくアドバイスをくれていましたね。

 ファームに落ちた時期でもピッチングの状態とかをLINEで送ってアドバイスをもらったり、大地さんの方からも「状態どう?」って連絡をくれたんです。「今は二軍での時間だけど、試合で投げて評価をもらって、おのずと状態は戻ってくるはずだからトレーニングもしっかりやって力むことなく頑張ろう」って。そういった言葉をもらいながら「もう一度一軍に戻りたい、必ず戻る」と投げていました。

 他にも大切にしているアドバイスはファームでなかなかうまくいかないなって時に永川勝浩投手コーチから言われた「お前は死ぬまで腕を振っていけ」です。「それがお前の持ち味なんだぞ」って。

 その言葉を受けて、中途半端に腕を振ってしまうと結果が出なくなる、しっかりと“腕を振る”というのをより意識するようになりました。

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