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「初回からバントはしない」「盗塁を増やす」参謀・藤井ヘッドコーチはカープを変えられるか

文春野球コラム ペナントレース2023

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 2019年から4年連続のBクラスに低迷するカープを変えるべく、新井監督とともに、藤井ヘッドコーチも現役時代、阪神でのコーチ経験を生かして、チームの意識改革に取り組んでいる。

藤井彰人ヘッドコーチ ©共同通信社

新井カープの色を出しながら勝利を目指すため

「今まではこうだったというのをカープに来てからめちゃくちゃ聞く。その考えが良いところもある。でも、“ここでこうするのは良くないからやめよう”とか、作戦でもプレーでも多い。ずっとカープにいるから、みんなそれが当たり前になっている。僕は(昨年まで阪神で)矢野さんから学んだこともあるし、そのほうがいいというのもあるので、伝えるようにしている」

 今までのチーム内の常識だけが正解ではない。新井カープの色を出しながら勝利を目指すためにも、新たな試みを行う。例えば、初回に犠打をしないという戦術だ。新井監督は「初回からバントはしない」と開幕前から打ち出しており、ここまで初回の犠打は0と公言した通りの戦いを行っている。

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新井監督と藤井ヘッドコーチ ©ちゃんこ長谷川

 藤井ヘッドコーチも犠打をしたから得点につながるという考えは初回に限っては疑問を抱いている。

「ロースコアが予想されるなら初回の犠打はいいと思うが、先頭打者が出て、無死一塁で送り犠打をしてくれたら、キャッチャーはめちゃくちゃうれしい。1死二塁でも、そこから安打1本は打たなくてはいけない。相手からしたら、アウト1個くれるんだとなる。そのアウト1個で相手投手も落ち着くかもしれない」

 捕手目線の考えだ。相手がどのような攻撃をされたら嫌なのかを考えた時に、立ち上がりはチャンスでもある。そこで自らアウトを与えることで、立ち上がりが不安定な投手によっては立ち直るきっかけとなってしまうケースもあるという。

 実際、5月19日の阪神戦の初回には安定しない相手先発の青柳に対して、各打者は早いカウントから積極的に振りにいった。凡打を恐れず、割り切った作戦で5点を奪うことに成功した。昨年は初回にイニング別で最多の22犠打を記録していたチームも、今年は新たなスタイルを確立した。

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