「はい」
「その人のことも好きで、すごいお金を使ったんですよね。でも、今はもう全然(好きじゃない)。今好きなその人も、いつかそういう時が来る気がしませんか?」
「はい」
「と思ったら、今使ってるお金、ちょっとバカらしい気がしませんか?」
「んー、しない」
僕の問いかけはマナミさんにはまったく響かず、この日の取材は終了した。
推し活は恋愛ラットレース
「推し活」という言葉がある。“推し”活動、つまり、アイドルやアニメなど自分が夢中になっている=“推し”ている対象に入れ込んで、金銭や時間を費やす行為のことである。そもそも“推し”はオタク用語だったという印象を僕は持っているが、今では特に若い世代の間で「誰推しなの?」「推し変しよっかな~」「私は箱推しだから」などのように、日常会話の中で普通に使われるようになった。
推し活という言葉が一般社会に広まっていくのと時期を同じくして、推しの対象分野も広がっていったように思う。アイドルやアニメといったオタク的なカテゴリーだけでなく、同じクラスにいる推しメン、コンビニの推しスイーツ、など日常のあらゆる場面に推しという概念は浸透している。
そして、マナミさんと同じように特定のホストに入れ込む女性たちのSNSをのぞいてみると、そこには「推しに会うために今日もホスクラへ」といったメッセージとともに「#推し活」のハッシュタグが付いていることも少なくない。
推し活が僕たちの日常に浸透していく一方、推している対象に入れ込みすぎた挙げ句に生活を破綻させてしまうケースも見聞きするようになった。試しに「推し活 破綻」で検索してみると、推し活の果てに財産を失った、といった内容のニュース記事がいくつも見つかる。
マナミさんは、推し活の果てに2000万円を失い、ホームレスになった。