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月給13万円の事務→セクキャバ嬢→立ちんぼに…20代女性がホームレスになっても「ホスト遊び」を続けてしまう理由

『Z世代のネオホームレス』 #2

2023/05/20
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 取材の中で彼女は、「好きな相手といっしょにいたい」「結婚したい」という望みを打ち明けてくれた。同じような願望を抱く同世代の女性は世の中にたくさんいるだろう。この点で、マナミさんと彼女たちとの間に大きな違いはない。

 彼女は、高校卒業をしてから1年半ほどの間、事務の仕事で収入を得ていたという。月に13万円という月給が低いと感じて、マナミさんは会社を辞めてセクキャバで働き始めた。昼職を辞めたあとにセクキャバ嬢に、という経歴は確かに一般的ではないかもしれないし、まっとうな歩みではなかったかもしれない。だが、だからといってホームレスになってしまうものだろうか。同じように、低賃金の昼職を辞めて歌舞伎町で働くようになった女性はたくさんいるはずだ。

 マナミさんは、同世代の女性たちと大差ない生き方をしてきたのではなかったのか。ではなぜ、彼女たちはホームレスにならず、マナミさんはホームレスになってしまったのか。この大きな差はどこでついたのか。

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 大学へ進んでいたらとか、昼職を続けていたらとか、転職するにしてもセクキャバではない職場だったらとか、“たられば”はいくつか思い浮かぶ。そういったさまざまな要素の中で、現在のマナミさんの姿に大きな影響を与えている、と僕が思うのは、やはりホストの存在である。

彼女がホームレスになった原因

 マナミさんの恋愛対象はホストだった。ホストとの恋愛が普通の恋愛と大きく違うのは、相手を好きになればなるほど、その気持ちを相手に伝えようとすればするほど、お金が消えていく、という点だ。相手に思いを伝えようと必死になればなるほど、ホストクラブでお金を使うために無理をせざるを得なくなる。異常なほど生活費を切り詰め、家賃や光熱費のためのお金をホストのために使い込んでしまったり、お金が手元になくなっても借金をしたり、高収入の風俗業界に身を投じたり。そんな無理を続けて稼いだ挙げ句、自分の「好き」という気持ちが相手のホストに届く前に、経済状況やメンタルを大きく崩してしまうのは想像に難くない。

 そして、自分自身の日常が破綻してお金を稼ぐことができなくなると、ホストクラブでお金を使うことができなくなる。お金を使えないというのは、彼女たちにとっては「好きな人に気持ちを伝える手段がなくなる」のと同じなのだ。だから、ホストクラブに通う女性たちはあの手この手で必死にお金を稼ぎ続けようとする。「あなたが大好きです」という愛情をお金で表現し続けようとする。働き続けても資産が増えない不毛な状態は「ラットレース」と呼ばれるが、マナミさんは言わば「恋愛ラットレース」を続けている状態であり、これこそが、マナミさんがホームレスになってしまった原因なのだ。僕はそう思う。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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