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《実力者がSBI証券の副社長へ》野村證券の“人材流出“問題 奥田社長の「リテール軽視は目に余る」

《実力者がSBI証券の副社長へ》野村證券の“人材流出“問題 奥田社長の「リテール軽視は目に余る」

丸の内コンフィデンシャル

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★野村の人材流出

 野村證券が揺れている。奥田健太郎社長が進める法人・投資銀行部門を旗手とするグローバル金融サービス路線に、国内のリテール部門が強く反発、優秀な人材が外部に流出しているのだ。

オンラインで記者会見する奥田氏 ©時事通信社

 ネット証券をはじめとする新興勢力の台頭によってリテール部門が弱体化しているのは事実。だが、ホールセールや海外のインベストメント業務は、国内リテールでの圧倒的な営業基盤・販売力があってこそだ。にもかかわらず、「奥田氏のリテール軽視は目に余る」(野村関係者)。

 奥田氏は20年4月に野村ホールディングス社長兼グループCEO(最高経営責任者)に就き、21年6月から野村證券社長も兼務する。グループの全権を掌握しており、その象徴が3月1日発表の人事異動だ。役員級で昇格した人間の大半が「奥田チルドレン」と呼ばれる側近で、リテール部門の昇格は2名だけだった。

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 奥田氏が構築した「スパイ大作戦」と呼ばれる社内の密通システムも評判は最悪だ。奥田氏は自分の部下を各部門に送り込み、経営に反発する社員を炙り出している。この時代錯誤の手法に若手社員は呆れかえっている。

 深刻なのが、優秀なリテール部門の人材流出だ。昨年にはシニア・アドバイザーの前川雅彦氏が退任している。

 前川氏はリテール部門でエリートコースを歩み、役員を歴任。IPOビジネスの担当常務も経験。最後はカーライル・グループと共同でのオリオンビールの買収で辣腕を振るった実力者だ。

 退任直後に前川氏は、北尾吉孝氏率いるSBIグループの中核SBI証券の副社長へと転じた。ライバル会社への移籍に社内は騒然となったが、前川氏は周囲に「野村のリテールは崩壊寸前。奥田氏の経営では早晩行き詰まる」と語っている。

 その奥田氏が抱える最大の火種は、投資金額の回収見込みがなく、毎年大幅な赤字を出し続けている「LINE証券」だ。21年3月期に計上した赤字は153億円に上る。「ZホールディングスとLINEの経営統合で、LINE証券の位置づけが曖昧なため、撤退の決断もできないでいる」(野村関係者)。

 野村ではSBIへの転職希望者が後を絶たないという。

丸の内コンフィデンシャル」全文は、「文藝春秋」2023年6月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

《実力者がSBI証券の副社長へ》野村證券の“人材流出“問題 奥田社長の「リテール軽視は目に余る」

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