オリックスを信じて疑わなかった樋口ディレクター

「絶対、オリックス、強くなると思うんですよね。大貴さん、いつかオリックス戦の中継を一緒にやりましょうね。ほんまに」

 いつも現場に行くと、こう言ってくれる方でした。

 オリックスが最下位争いをしていても、連敗が続いていても……いつもオリックスにはいつか光が差すと信じて働いている方でした。

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 関西テレビのオリックス担当の樋口儀之ディレクター。

 僕がフジテレビ『すぽると!』キャスター時代、オリックス・バファローズは借金を背負うシーズンが続いていました。正直、なかなか番組内でも取り上げてもらえることがなかった……取り上げたくても順位上、オリックスのニュースの尺は本当に短くせざるを得なかった……。でも、樋口ディレクターはいつも「オリックスはええ選手がおるんです。スタッフもホンマにええ人ばかりなんです。絶対、絶対、強くなる時が来るんです」と信じ、ニュースに扱われなくても、取り上げてもらえなくても地道に、愚直に、誠心誠意を込めて現場で取材を続ける方でした。

 当時、僕は番組キャスターであり各チーム偏りなく、バランスよく伝えることに徹していました。とにかくニュートラルに、とにかく私情が入らないように心掛けていました。

 でも……キャンプに取材に行った時も、京セラドームに取材に行った時も、スカイマークスタジアムに行った時も、いつも温かく出迎えてくれて、チームの現状を、選手の細かな取材メモを、チームスタッフの皆さんのことを教えてくれるのが樋口ディレクターでした。

 オンエア上は出さないけれど、フジテレビ系列オリックス担当の樋口さんに会うたびにオリックスがさらに好きになっていきました。

チームにも伝わった樋口ディレクターの取材愛

 春季キャンプでオリックスのこれぞ!というネタがない時は自分からリポートを買って出て、自分がマイクを持ち、他にはないチームネタを紹介することもある方でした。業界用語になりますが“ディレクター魂”を感じる制作者でした。毎年のように注目選手が入団してくる巨人や、大型補強を行うソフトバンクはキャンプ中の目玉ニュースに困ることはありませんでした。

 でも、最下位争いをしてきたオリックスはニュースを生み出すのが困難な時期がありました。それでも、現場で何とかオリックスの魅力を皆さんに知ってもらおうと樋口ディレクターは取材を続けていました。

 こんな状況のチームでも、こんな僕らでも必死に、一生懸命に話を聞きに来てくれる……バファローズというチームと選手にはこの姿が伝わっていました。

 当時、オリックスの監督だった岡田彰布さんが開幕戦直前のベンチ裏で特別にインタビューを撮らせてくれたのも、当時の大エースだった金子千尋投手が『すぽると!』に生出演してくれたのも、プロ野球ニュースでオリックス特集を初めて組んで、小谷野栄一選手がロングインタビューに答えてくれたのも、糸井嘉男選手が自主トレを撮影させてくれたのも、森脇浩司監督がキャンプ時にスタメン予定オーダーをパネルボードを使って教えてくれたのも樋口さんの直向きな姿を見て、知ってくれていたからでした。

 取材愛は選手、チームに伝わる。

 これを教えてくれたテレビマンの大先輩、樋口儀之さん。