「中日弱いね」「なかなか勝てなくて辛いね」。今シーズンが始まって2ヶ月強、他球団ファンの知り合いからこれまでさまざまな形で励ましの声をかけられた。
「今年のドラゴンズは違う」。開幕前、侍ジャパンに壮行試合で中日ドラゴンズが勝った頃、私たちドラゴンズファンの多くはそう思っていたはずだ。しかし、シーズンが始まってみると多くの選手の不調や離脱、12球団最速ペースで借金を増やし、正直辛くないと言ったら嘘になる期間であった。そんなドラゴンズはここにきてカード勝ち越しが増え、細川成也選手や石川昂弥選手、村松開人選手をはじめとする若手の活躍が続き、チームが躍動してきた。勝利がこんなに嬉しいものだと実感させられる数週間だった。
辛かった約2ヶ月。私は改めて感じたことがある。チームの状態や選手の状態が良くない時こそ、私たちは推し球団を、そして推し選手を、力強く応援すべきではないかということだ。
ドラゴンズを愛し、ドラゴンズファンに愛されている助っ人外国人
今回はダヤン・ビシエド選手の話をしたい。若手選手が調子を上げてきた今、ビシエド選手が本調子になればドラゴンズの打線にとってこんなに心強いことはないと私は思う。ビシエド選手といえば、言わずと知れた竜の主砲。ここ数年、ずっと4番を背負ってきた。他球団のファンの方の中でも最も知名度が高い選手の一人だろう。
ビシエド選手の不調も今シーズンの大きな誤算の一つだった。6月5日現在、ここまでホームランは1本、打点もわずか4と不振が続いている。シーズン序盤からこれほど2軍との行き来を繰り返したのは彼にとっても予想外の出来事だと思う。若手選手が数多く台頭してきたこともあって、SNSなどでビシエド選手に対する厳しい声や心無い声を見かけるのも増えた。チャンスの場面で打てなくて一番辛いのは、本人だ。こんな時だからこそ私は厳しい声をかけるのではなく、大きな声でビシエド選手にエールを送りたい。
私はビシエド選手が大好きだ。2016年にドラゴンズファンになった決して古参ではない私だが、ファンになった当初から活躍し続けている選手は少ない。特に外国人選手は目まぐるしく出入りしていく中で、ビシエド選手ほどドラゴンズを愛し、ドラゴンズファンに愛されている助っ人外国人はかつていただろうか。
キューバ出身のビシエド選手が、19歳の時、キューバからいかだに乗って亡命し、ドミニカ共和国で居住権を獲得した話は有名だ。その後、アメリカのメジャーリーグでさまざまな苦悩を経験し、当時ヘッドコーチだった森繁和さんから声をかけられて日本へ渡ってドラゴンズの選手となった。2016年は開幕から3試合連続ホームランを放つなど、鮮烈な日本球界デビューで絶好のスタートを切る。2018年8月には月間47安打のセ・リーグ記録を樹立し、シーズンでは首位打者と最多安打のタイトルを獲得。まさにドラゴンズの頼れる4番となったのだ。
打撃面が注目されがちだが、実はビシエド選手は守備もとても上手い。一塁線の強い打球も軽やかにキャッチし、際どい送球もきっちり捕球してくれる。ビシエド選手の捕球で防いだ失策も多く、かつて京田陽太選手(現・横浜DeNAベイスターズ)は「ビシエドが一塁にいると安心して投げられる。すごく助けてもらった」と話したという。