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ある時は1枚ずつ服を脱いで白く薄い下着姿へ、ある時はゴスロリ姿の“ワンコ”に…多部未華子(34)の“迷い”と3つの転機

2023/05/28
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 このドラマでは、二宮和也演じる主人公・山田太郎を大金持ちのぼんぼんと勝手に勘違いし、“玉の輿”を妄想するヒロイン・池上隆子役を演じた。もちろん演技力も評判になったが、それ以上に世間的に言われたのが“目力の強さと声の良さ”だ。この2つは以後、彼女にとっての最大の魅力であり、女優としての武器になって行く。

 続いて映画『夜のピクニック』(’06年/原作・恩田陸)に主演。シングルマザーという家庭の事情は抱えながらも“どこにでもいる普通の高校生”甲田貴子役を自然体で演じながら、不思議な存在感を示して高い評価を得た。彼女が星空を見上げるポスタービジュアル、その目力の強さも一度見たら忘れられない。

 そして2008年、フジテレビの木曜22時からのドラマで、玉木宏、綾瀬はるかとともにトリプル主演。作家・万城目学原作のSF小説『鹿男あをによし』のドラマ化で、物語のキーパーソンとなる剣道部の女子高生・堀田イト役を演じた。

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 この『鹿男あをによし』では、神の遣いの鹿に、玉木演じる主人公教師の小川孝信ともども“人間の目にはわからないが、実際には顔が鹿”という呪術をかけられる……という難しい役を時にミステリアスに、時に凛としたティーンの美しさで演じ切った。

 最終回、玉木に強引にキスをするシーンがあるが、おそらくこれが彼女の出演ドラマ史的に“初の”本格キスシーンであり、ラブシーンだろう。初キスが別れのタイミングでもあり、その後、ひとり泣きながら歩く彼女の演技は、青春のほろ苦い、涙の味を思い出させてくれる感動的なシーンとなっていた。

2008年、フジテレビ「鹿男あをによし」の制作発表会見で。左から多部未華子、玉木宏、綾瀬はるか ©時事通信社

1600人の中から選ばれた第二の転機。“迷い”の中で一気に知名度は高まり…

 そして第二の転機となったのが、1600人弱の応募者の中から選ばれたNHK朝の連続テレビ小説『つばさ』(’09年)の主演だ。後年、web「NHKアーカイブス」に掲載されたインタビューでその頃を次のように振り返っている。