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“若返った老女”にUQのCM。母親になった後も活躍を続け…

 こうして演技の幅を広げた彼女は、どんどんと演技派女優として進化を遂げ、2016年には映画『あやしい彼女』(’14年公開の韓国映画『怪しい彼女』のリメイク)で、“20歳に若返る元老女”というこれまたハードルの高い主人公役に挑戦。

 彼女演じる大鳥節子の73歳時代を演じた大ベテラン、倍賞美津子に対しても決して引けを取ることなくお芝居の上で堂々と渡り合い、ビジュアルは20歳、中身は73歳の女性を、なんら違和感なく見事に演じ切り、“演技派女優”としての底力を見せつけている。

 この2016年には、非常に印象的なCMにも出演している。携帯電話会社・UQコミュニケーションズのCM「UQ mobile」だ。

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2016年、UQモバイルの発表会に現れた女優の(左から)永野芽郁、深田恭子、多部未華子 ©時事通信社

 深田恭子演じる長女、多部未華子演じる次女、当時まだ新人だった永野芽郁演じる3女の三姉妹を主人公にしたこのCMはそのシュールな演出や、ピンク・レディーの大ヒット曲「UFO」をアレンジ(?)したCMソングとともに評判を呼び、長期シリーズ化。『ひらけ!ポンキッキ』(’73年)で有名なムック(ブルームク)が父親、ガチャピン(ブルーガチャ)が母親役としてCMに登場したりと話題に事欠かず、2021年のシリーズ終了まで話題を提供し続けていた。

 何よりもこのCMとの出会いが、人生最大の転機となった。2019年、このCMのディレクターで、写真家の熊田貴樹さんと結婚。引退することなく仕事を継続しながら、2021年には第1子を出産。母親となったあとも活躍を続けている。

 冒頭にタイトルを挙げた出演作の映画『流浪の月』の舞台挨拶でも、「(看護師という役柄上)監督から、“(松坂)桃李君を触っておいて”と言われて、撮影の空き時間やセッティング中に、ずうっと触らせていただいて(笑)」と、冗談も交えて淡々と語り、もはや大女優の風格すら感じさせている。

 星野源とともに出演中のキリン「淡麗グリーンラベル」のCMを観るにつれ、多部さんには往年の大女優、吉永小百合や八千草薫、大原麗子らの“系譜”を感じる。それこそ『あやしい彼女』で倍賞美津子が演じた73歳、それ以上の年齢まで活躍する、大女優となって欲しいし、多部未華子ならそうなれる気がしてならない。