自分自身のなかで変化が起こってくるにつれて、私はどんどん精神科看護という世界に没頭していったのです。
このように精神科看護に面白さややりがいを感じるようになっていたある日のことでした。
一人の患者さんが保護室に入院してきました。
その患者さんは統合失調症で、現実にはあり得ない妄想を絶えず口走っていました。
驚いたのはその患者さんがまだ中学生で、しかも私の出身中学の生徒だったことです。
それまで私が出会った患者さんはどれほど若くても20歳代くらいで、大半が30代~60代でした。
そのためまだ10代前半の若さで陽性症状の激しい患者さんを見て、強い衝撃を受けました。
あまりに妄想がひどく、学校生活を送れない状態
今でこそ発達障害などで若い年齢の患者さんが入院することは珍しくありませんが、当時はまだ10代前半の患者さんが入院するのはとても珍しいことでした。
そのような若い年齢の患者さんが宇宙規模や世界規模のあり得ないような妄想を絶えずブツブツとつぶやきながら、ひどい陽性症状で保護室に入れられたのです。
周囲に暴力を振るったり暴れたりするタイプの症状ではありませんでしたが、あまりに妄想がひどく、学校生活を送れるような状態ではありませんでした。
24時間見守っていないと、自分自身をひどく傷つけてしまうリスクもありました。
そのため妄想がある程度治まるまでは、保護室でしっかり薬を飲んでもらうことが必要でした。
その患者さんはしばらく保護室で過ごしたあとに、症状が落ち着いたことを確認してから大部屋へ移動し、やがて退院していきました。
基本的に一生付き合っていかなければならない病気
若い患者さんはあまり長く入院はさせないことが多いので、それほど長期の入院ではなかったと記憶しています。
また両親がきちんと投薬管理をしていたようで、退院後に再入院してくることはありませんでした。
しかし統合失調症は治療によって症状が落ち着いても、基本的に一生付き合っていかなければならない病気です。