引っ越しのとき、相鉄沿線を候補に入れてほしい
――でも、おそらくそういう人たちの多くは相鉄さんの車両には乗っても相鉄線そのものを利用するとは限りません。コスト面を考えると一般的な車両と比べてだいぶ高くなるはずです。そこまでして“知ってもらいたい”という理由って?
「まず、知ってもらわなければ相鉄沿線に住もうという発想にはならないですから。それこそ60%の人がウチのことを知らないわけです。だからこそ、目立つ車両でウチのことを知ってもらって、そこから利便性や町の住みやすさも伝えていきながら、引っ越しの際に相鉄沿線を候補に入れてもらう。JRとの直通が始まれば二俣川から新宿までの所要時間は横浜乗り換えの今までと比べて約15分短縮されて約44分になる予定です。また、東急との直通では新横浜駅に直接アクセスできるようになる。ただ、こういう利便性の向上も、いくらアピールしてもウチのことを知らないと伝わりません。そのためにも、沿線以外の人が見ても『あ、相鉄の電車だ』と思ってもらうことが、次の100年に向けて大事な一歩になるんです。もちろん駅や沿線の町もより魅力あふれるものにしていって、今沿線に住んでいる人にもこれから住む人にも喜ばれるようにグループ全体でやっていければ、と思っています」
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流通業43%、不動産業22%のなかで存在感を出す「相模鉄道」
そんな相鉄さん、実はグループ全体の売上を見ると、鉄道やバスなどの運輸業は約15%だという。この数字は「相鉄フレッサイン」や「サンルート」などを展開するホテル業とほぼ同じ。スーパーマーケット「そうてつローゼン」を中心とした流通業の43%、不動産業の約22%には大きく水をあけられている。それでも、相鉄さんの中心は開業以来の鉄道であることは変わらない。
鈴木さんは、言う。
「もちろんすぐに成果がでるわけではないかもしれません。100年先を見据えたプロジェクトですから。ただ、100年経ったときに、YOKOHAMA NAVYBLUEが誰もがわかる相鉄の色になり、沿線の町が賑わっている。そうなっていることを目指しています」
JRや東急との直通運転が始まれば、今まで相鉄さんを知らなかった人でもその存在を知ることになるはず。その時こそが未来に向けた沿線人口確保への大勝負の始まり、というわけだ。そして、紺色の電車はいわばその大勝負の最初の仕掛け。果たしてこの勝負、吉と出るか凶と出るか……。その答えがわかるのは、どうやらだいぶ先のようである。
写真=鼠入昌史