昨年11月、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の元ボーカルでアーティストのコムアイさんが妊娠。しかし彼女は長らく母になることをためらっていたという。
ペルーの熱帯雨林で出産予定であると発表し、賛否両論を巻き起こした彼女のいまの心境は。
CREA夏号「母って何?」掲載インタビュ―から、母親になることの重圧から解放された経緯と、アマゾンでの出産について議論が巻き起こったことへの率直な気持ちについて語った箇所を一部公開します。
「私は私のやり方で母親になるしかない」
母は温かい人で、私は母に愛されて育ったことを感謝しています。いつも家に居て、美味しいごはんを作ってくれて、地域の子どもに英語を教えて。夫の実家の片付けや掃除も当たり前にしていて、「いいお嫁さん」だったと思います。ストレスを溜めているように私は感じていたけれど、それも彼女のやり方だったのかもしれない。
だから私にとって「母親」になるということはあの献身を求められることで、19歳で母を亡くしてからも、記憶の母を思い出しては「私は母親になるのはまだ荷が重い」と思っていました。
でも昨年、30歳の誕生日を迎えたときにふと思ったんですよ。そういえば、私を産んだ母の年齢と一緒くらいだ、って。30歳は成熟した大人の節目だと思っていたけど、全然そうじゃなかった。もしかして、母もいまの私と同じように未熟さを覚えながら私を産んだのかもと思ったら、肩の力が抜けたんです。それに私は、母のそれとはあまりにかけ離れた人生を送っている。「私は私のやり方で母親になるしかない」と思いました。
世界中を暮らすように旅してきたので今回の出産もその旅のひとつ
コムアイさんは、ペルーのアマゾンに暮らすワンピス族の村で出産をする。彼女がその決断を明らかにすると、ネットでは安全性や部族社会への配慮の有無などの論が交わされた。
ワンピス族の村にお世話になることにしたのは、彼が研究で半年間滞在していて、村のリーダー格の人と信頼関係があるから。私はそれに甘える形です。出産の相談をしたら「もちろんできるよ」と快諾してくれ、パルテーラという産婆さんを紹介してくれました。