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遊撃手として前人未到の2000試合出場 『#坂本勇人はなぜ神なのか』を考える

文春野球コラム ペナントレース2023

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 6月16日の金曜日。東京ドームは湧きに湧いていました。

 この日、久しぶりにプレーボールから試合終了までテレビ観戦をしていた私。試合終了とともに今回のコラムのテーマが決定するほどに、心が躍りました。

 9回裏、サヨナラスリーランホームランでの劇的な幕切れ。

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 殊勲の放物線を放ったのは我らG党の誇り、坂本勇人選手でした。

 説明不要のスーパースター。

 手にした優勝やタイトルは数知れず。実績もさることながら、プレースタイルやルックスに至るまでありとあらゆるものを兼ね揃えた坂本選手をひたすら愛でる。今回はそんなコラムを書かせていただこうと思います。

坂本勇人 ©時事通信社

応え「続けた」16年間

 完全に私事になりますが、本日6月23日は純烈として芸能界でデビューした日。2010年にデビューしたので、丸13年が経ったわけです。

 ここ数年は全国どこへ行っても温かく迎えていただき、年間300ステージくらいに立たせてもらっています。でも、13年の歴史の中で前半はほとんど仕事がなかったり、期待して応援いただく声も今ほど大きくはなかったりもしました。

 そんな13年の歴史を経た今、毎日ステージに立ち続けることで受ける体の負担、それ以上に「応援していただくみなさまに応えたい」という責任の重みをひしひしと感じています。

 デビューしてからの13年間、仕事がある時もない時もいつも心の中にはジャイアンツがあり、応援し続けてきました。

 選手は激しく入れ替わり、入団するルーキーもいたら引退するベテランもいる。そんな中で、僕が純烈として過ごしてきた期間、いつもジャイアンツのショートは坂本選手が守っていました。

 13年間どころではありません。坂本選手は19歳の時点から16年間、毎日のように1軍の試合というステージに立ち続けているのです。

 僕の場合は、お客さんが数人というステージもあったり、出番は1曲だけという日もありました。しかし、坂本選手は何万人もの観衆の目の前で、ほとんどの試合でプレーボールから試合終了までプレーし続けているのです。

 愛するチームの看板スターですが、もはや「推し」という感覚はありません。それよりも、ただひたすらにリスペクトが湧いてきます。

 同列に語るにはあまりにもおこがましいですが、入場料をいただいて人前に立って何かをするという点では僕の仕事も共通しています。

 それを、16年間ほぼ休みなく、一番重く責任がのしかかる位置で続けてきた坂本選手。アスリートとして、さらには人として心からの敬意が湧き出て止まらないのです。

日々、歴史に名を刻むレジェンド

 坂本選手のショートでの出場試合数は、とうとう2000試合を超えました。日本プロ野球歴代1位の記録を達成し、さらに新記録を日々更新しています。

 この記録をはじめ、通算二塁打数が5位、通算安打数18位、通算試合数49位、通算本塁打数57位と球史全体で見ても傑出した数字を叩き出しています。

 ここ最近は試合に出るたび、ヒットを打つたび、ホームランを打つたびに「◯◯選手の記録を抜いた」と記事になるのが定番になってきました。

 しかも、「◯◯」に入る名前は、長嶋茂雄さんや王貞治さん、張本勲さんなど疑う余地のないレジェンドばかりです。

 坂本選手が現在、歴代1位にもっとも近づいている通算二塁打数の日本記録保持者の立浪和義さん(中日監督)は、「当分抜かれることはないと思っていた」と笑顔で語った上で、「あれだけの選手がそこを意識してやるのも素晴らしい。むしろ坂本くんであれば抜かれてもいい。そういう思いで見ていたい」と、敵将ながらエールを送っています。

 そんな坂本選手ですが、昨年は出場試合数が83試合、打率.286、5本塁打、33打点という成績でした。

 決して悪くはない数字だとも思いますが、坂本選手のキャリアの中では最低と言える数字だったのです。そこにプライベートでの報道も重なり、昨年後半やシーズンオフはかなりの逆風が吹いていました。

 WBCの侍ジャパンへの選出も早々に辞退をして、並々ならぬ思いで迎えた今季。オープン戦から調子が上がらず、開幕を迎えると22打席で0安打という特大のスランプから始まりました。

 昨年から吹いていた逆風は台風レベルまで強まり、ネット上は四面楚歌状態。

「終わった」「辞めろ」「世代交代急務!!」などと、これまでの功績などなかったかのような辛辣すぎるコメントが並んでいました。

 しかし、そこから盛り返して現時点で打率.267、10本塁打。特に5・6月の打率は.306と上昇カーブを描いています。

 限界説やコンバート論を吹き飛ばしながら、今もなおジャイアンツのショートに君臨しているのです。

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