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遊撃手として前人未到の2000試合出場 『#坂本勇人はなぜ神なのか』を考える

文春野球コラム ペナントレース2023

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スーパースターの光と影

 40代以下のジャイアンツファンであれば、「長嶋茂雄さんや王貞治さんの全盛期をリアルタイムで見たかった!」と思ったことが一度はあると思います。僕もそう思ったことがたくさんあります。

 しかし、今ジャイアンツを応援している人は数十年後、若者に対して「俺は坂本勇人のプレーをリアルタイムで見たぞ」と誇れる未来が待っています。

 長く務めたジャイアンツのキャプテンという立場。前任の阿部慎之助さんは坂本選手にその役目を託してから、5年間現役選手として見守るように支えていました。

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 今年からそのキャプテンを岡本和真選手に引き継いだ坂本選手。「歴史は繰り返す」という言葉通りならば、あと5年間は現役で見られるな……と幸せな妄想をしてしまいます。

 不安定な戦いぶりで黒星が先行していた今季のジャイアンツですが、坂本選手の成績と比例するように調子を上げています。交流戦は最終盤まで優勝争いを演じました。

 34歳の坂本選手がグラウンドに立ち続けることは、若手など新しい力の出番が限られ「世代交代」とは相反することになるのもわかります。

 それでもなお、強いジャイアンツであるための必須条件に、背番号6の躍動があると思えてならないのです。

 6月16日にサヨナラホームランで試合を決めた後、Twitter上で「#坂本勇人はなぜ神なのか」というハッシュタグが広まりました。

 なぜなのか……。

 2000試合ショートで試合に出続けたということは、2000回ショートのポジション争いに敗れた選手がいたのでしょう。

 積み上げた2264本のヒットを打った相手投手の中には、その1本を打たれたことで引退に追い込まれた投手もいたのでしょう。

 まばゆいほどにグラウンドで輝く坂本選手は、真剣勝負で力を尽くした末に敗れた選手たちの影の上に立っているのです。

 いつか次世代のスーパースターが現れた時、その選手の足元には勝負に敗れた坂本選手の影が存在しているのだと思います。

 この影の濃さと大きさが、照らすスポットライト以上に坂本選手を神々しく見せているのではないでしょうか。

 躍動し続ける背番号6を背負うレジェンドとともに、今日から始まるジャイアンツの後半戦を全力で応援していきたいと思います。

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