小川泰弘の謎のバントスタイル
そんななか、僕が個人的に気になっている、ある男のとあるプレースタイルがあります。
「ライアン小川」こと小川泰弘――今年11年目の自他ともに認めるスワローズのエースが、昨シーズン後半になって突如始めた、異様にバットの位置が高いあのバントの構え。
今年は11試合の先発登板(6月23日現在)で、すでに4つ決めている送りバントは、個性的すぎる構えから繰り出されたものです。
自分の目線より高い位置でバットを構える独特の“ポーズ”。その構えをした瞬間、ざわつく観客。チームメイトの村上宗隆らもベンチでそれを真似します。現役時代、バントを人よりかは多くやっていた僕でも、あの構えには驚かされました。
ライアンとの対話
そう言えば、現役時代、ライアンに「どうやってバントやっているの? バントを教えてほしい」と言われたことがありました。
まずは目とボールを結ぶ線上にバットを入れること。バットを手でコントロールしたり、膝を上下させたりすると目線がずれるので、体ごとボールに寄せること……そのためには、前の手(右打者なら右手)一本でコンとバットにボールを当てる練習をしてみたら、と言いました。
利き手の操作性を上げることもひとつですが、その練習をするとき、投球に対して、手だけで当てに行ってしまうと、ほとんどファウルになって成功しないことがおのずとわかってくるはずなのです。
プロ11年目、セ・リーグの先発投手であるライアンは誰よりも自分の打席でのバントの重要性をわかっています。先発投手は大抵2~3回は打席が回ってきます。そのとき味方が塁に出れば、自分がバントを成功させればチームを救うし、自らも助けることができる。
得点圏にランナーを進めればそれだけ勝つ確率が高くなるのは当然です。何年もケガなくローテーションを守ってきて、かつ勝てる投手は、打撃やバントの練習もおろそかにしない、これは当然なのです。
実は理にかなった構え
きっと彼なりにいろんなことを考え、相当な数の試行錯誤を重ねて今のスタイルにたどり着いたのでしょう。バントで一番難しいコースはインハイだと言われています。顔に近いところに速い球を投げられれば体は避けようとするし、ファウルになりやすい。一番難しいコースに構えておけば、その他のコースには対応しやすい。ある意味バントの基本はしっかりと押さえているのです。
11年間で犠打48。22年間で犠打144の石川雅規さんには到底かないませんが、スワローズのローテーションを長く守るということは、犠打の数も当然多くなるのです。
グッズ化してファンと盛り上がりたい!
みなさんご存知のとおり、料理やファッションなど、こだわりの強いライアンですから、今のスタイルもこだわり抜いてほしいと思います。ここで僕から提案があります。
あの「謎ポーズ」のグッズを作るというのはどうでしょうか? 例えばバントの構えが描かれたタオル。ノーアウト1塁、ライアンに打席がまわったらみんなで一斉に頭上に掲げる……。決めることを祈りつつ、そして成功したらベンチも球場もグッと盛り上がる−−−ちょっとワクワクしませんか?
さっそくグッズ担当(かさいー)とつば九郎に相談してみることにします。『つば九郎テレビショッピング』で「ライアン謎バントタオルを新発売」。ノーギャラで出演してくれる坂口智隆さんが、つば九郎と軽快な掛け合いをしてくれることでしょう。
発売のあかつきには売り切れ必至、ご予約はお早めに……。
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