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上田 ずいぶんとかけられましたね。

松本 もっと早く手放していればと、自分でも呆れています。

上田 空き家を売るときの大原則は、なるべく所有期間を短くして、適切に管理すること。維持費が抑えられるし、管理状態がよければ、売りやすくなるからです。それでも長期にわたって空き家の管理をやり続けたのは立派なことです。空き家は適切な管理をしないとすぐ荒れてしまいますし、法的リスクも高くなるからです。

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父親のこだわりが詰まった家だからこそ、なかなか手放せなかったそうだ(本人提供)

空き家をきちんと管理しないと賠償責任のリスクが増す

松本 それは実際に体験したのでよくわかります。空き家はしばらく放っておくとすぐに草がぼうぼうになったりして、ひと様に迷惑かけるようになるんですよね。

上田 そうなんです。たとえば雑草は放っておくとたちまち腰の高さくらいまで伸びますし、夏場なら草の種類によっては人の背丈ほどまで成長します。ひどい場合は、それこそツタが家全体にからまり、どこに家があるのかわからないジャングル状態になります。雑草の生い茂った家は一目で空き家とわかるので、ゴミのポイ捨てに始まり家電や粗大ゴミの不法投棄を招きやすく、どんどん荒れてしまいます。

松本 さすがにそこまで放ったらかしにはしませんでしたけど、雑草などは本当にあっという間に伸びるのでびっくりしました。

上田 それをご存じない方が多いんです。雑草の繁茂(はんも)はやぶ蚊などの虫の発生源になりますし、その虫を狙うほかの昆虫や動物などを呼び寄せることにもつながります。

松本 そうそう、虫がうじゃうじゃわくんです。

上田 空き家の管理を怠るとネズミも発生します。ネズミは繁殖力が強く、どんどん増えます。それを狙ってイタチやハクビシンなどの害獣も集まってくる。

松本 えーっ、そうなんですか。

 

上田 来ます、来ます。しかも寄って来るのは動物だけではありません。怪しい人間もやって来ます。空き家とわかれば、不審者が侵入して棲みついたり、子どもたちのたまり場になったり、犯罪者のアジトとして利用されたりする恐れもあります。あとは放火。空き家は人の目が届きにくく、ポストにたまったチラシや不法投棄されたゴミなど火種になるものがあるので、放火のターゲットになりやすいのです。

松本 空き家というのは犯罪や放火の心配もしないといけないんですね。

上田 気をつけることはまだまだあります。たとえばシロアリ。柱や梁(はり)など建物を支える構造部分の木材を食べるので、シロアリ被害が進んだ住宅は柱や梁が弱くなり、大地震などの際に倒壊などの被害が出る可能性を上げてしまいます。シロアリ被害は気づきにくく、発見したときには手遅れというケースが少なくないのです。

松本 対策って何かあるんですか。