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チャットGPTが架空の記事を整然と回答

「幻覚」が、個人の名誉を損なうケースは、米国でも注目を集めた。

〈知り合いの法学教授から、チャットGPTを使った「教授によるセクハラ」に関する調査について、興味深いメールを受け取った。このプログラムは、私がアラスカ出張の途上、ロースクールの学生の体を触ったとして、2018年のワシントン・ポストの記事でセクハラを告発された、と整然と回答していた〉

 ジョージ・ワシントン大学法科大学院教授で、保守派のコメンテーターとして知られるジョナサン・ターリー氏は、オピニオン・コラムニストを務めるUSAトゥデイの今年4月3日付コラムで、そう述べている。

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〈驚きだった。私は学生とアラスカに行ったことなどなく、ワシントン・ポストもそんな記事を掲載しておらず、誰からもセクハラや暴行で訴えられたことはないのだ〉

フェイクニュースによる政治的バイアスの影響を指摘

 ターリー氏は、広く知られた保守派の論客だ。ドナルド・トランプ前大統領が不倫口止め料支払いをめぐって起訴された事件について、FOXニュースのコメンテーターとして、トランプ氏の起訴や担当検察官への批判などを展開していた。

 そのような背景から、ターリー氏は、チャットGPTが捏造するフェイクニュースについて、政治的バイアスの影響を指摘する。

©AFLO

 検索と連動した生成AIなら、リアルタイムでネット上のフェイクニュースも取り込んでしまう。生成AIから生成AIへの伝言ゲームで、フェイクニュースのエコーチェンバー(反響室)が作られ始めている。

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チャットGPTvs.人類』を紹介した記事の全文は、『週刊文春WOMAN2023夏号』でご覧いただけます。

たいらかずひろ/桜美林大学教授。1962年生まれ。桜美林大学リベラルアーツ学群教授。86年朝日新聞社入社。社会部、シリコンバレー駐在、科学グループデスク、編集委員、IT専門記者などを経て、19年から現職。著書に『悪のAI論──あなたはここまで支配されている』(朝日新書)など。最新刊は『チャットGPT vs.人類』(文春新書)。