「お前が着てるのブランド物だろ、早く脱げよ」――ある20代女性がホストクラブでの売掛(≒ツケ)が払えなくなったことをホストに伝えたところ、そのまま質屋に連れていかれて身ぐるみはがされることに。2023年2月、その最悪な顛末を綴った記事が「文春オンライン」に掲載されるや、たちまち305万PVを超え、話題を呼んだ。
質屋と歌舞伎町とはwin-winの関係
「歌舞伎町の質屋では日常的な話なんですよね。知り合いのホストからは『こんなん、まだまだアメぇ方だよ』って言われました」とは記事を担当した20代の男性記者。「ここ半年弱の間にも、さらに新しい質屋がオープンしています。売掛が払えなくなった女性客が質屋に持ち物を売りに行くだけじゃなくて、ツケをためたままお客が逃げちゃって、ホスト側が、逃げたお客の入れていたシャンパンのボトルを質屋に持っていくっていうパターンもあるんです。質屋と歌舞伎町はwin-winの関係。質屋の店舗もホストクラブの営業時間に合わせて早朝まで開いていたりします」
305万PVの反響を受け、歌舞伎町女子の物語をマンガ化
歌舞伎町にあふれる、女性を標的にしたビジネスの暗部をあぶりだしたこの記事は再掲載でも大きな反響を呼び、今回、記事を原案にしてコミカライズされることに。
コミカライズは90年代から30年間、少女漫画家として活躍している今井康絵氏が担当している。
「これまで描いてきたものとは違うジャンルのコミカライズに挑み生々しい歌舞伎町の質屋やホストクラブの実情に触れられたことは、とても勉強になりました。印象深いのは、ホストクラブ通いを始めた当初は額を決めてほどほどに遊んでいた主人公にスイッチが入るシーン。ふとしたことから推しのホストにのめり込んでいくことになります。フィクション作品ではありますが、人って誰でも『スイッチ入っちゃった』っていう瞬間があったりするものですよね。そういう意味で、これはホストに夢中になったが故の特殊な話だとも割り切れず、誰にでも起こり得る話だと思っているんです」(今井氏)
素朴な女子大生が社会人になる過程で出会ったホストクラブ。理性的に遊んでいたはずが、ささいなことがきっかけで質屋にすがることになる転落人生に。ノンフィクションの記事とはまた異なる、マンガならではの震えを体感してみてはいかがだろう。