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「両親は『漫画家になるのは諦めたほうがいい』と…」愛知出身の24歳女性がそれでもプロ漫画家を目指して上京した“悲壮な覚悟”

多摩トキワソウ団地 #2

2022/09/25

 昭和を代表する漫画家が若手時代に暮らした、伝説のアパート「トキワ荘」。2021年6月に、その現代版ともいえるシェア団地「多摩トキワソウ団地」が立ち上がった。オープンから約1年で、プロデビューした人や漫画雑誌で表彰された人を次々と輩出。現在は、漫画家志望者からの入居希望が殺到し、キャンセル待ちが続いている。

 運よく入居できたとしても、生活できるのは原則3年間だけ。多摩トキワソウ団地で過ごす漫画家の卵たちは限られた時間のなかで、悩み、惑いながらプロデビューを目指している。

 今回は、入居者の1人である古海さん(24)に、入居までの経緯や、多摩トキワソウ団地での生活、プロデビューへの思いについて話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)

©三宅史郎/文藝春秋

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漫画雑誌での連載獲得を目指して奮闘する古海さん

 愛知県出身の古海さんは現在、少年・青年向けの漫画雑誌での連載獲得を目指して奮闘中だ。すでにコンペでの受賞歴があり、担当編集者のアドバイスを受けながら日々漫画制作に没頭している。

 そんな古海さんが多摩トキワソウ団地に入居したのは、2022年5月。愛知の実家に拠点をおいていた彼女は、短大卒業後の2年間、働きながら漫画を描き続けていた。

取材に協力してくれた多摩トキワソウ団地の入居者・古海さん(24)

 しかし、編集者や出版社が集う関東に比べて、愛知では物理的距離によるコミュニケーションロスや機会損失があると感じ、2020年に勤めていた企業を退職。神奈川に住んでいる親族の家へ一時的に身を寄せたあと、ひとり暮らしをしながらアルバイトと漫画制作を始める。

「ようやく物理的な距離が少し縮まった」――そう思ったのもつかの間、彼女は新たな壁にぶち当たった。