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「両親は『漫画家になるのは諦めたほうがいい』と…」愛知出身の24歳女性がそれでもプロ漫画家を目指して上京した“悲壮な覚悟”

多摩トキワソウ団地 #2

2022/09/25
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「多摩トキワソウ団地でならブレイクスルーできるかもしれない」

「毎日ひとりで描いていると、本当に心が病んでくるんです。コロナ禍というのもあって、人にも会えない、相談したくてもできる人がいない。ひとりで考え込んでも作業が捗らず、悶々とするのを繰り返す状況で、辛かったですね」(古海さん)

 多摩トキワソウ団地の運営団体・LEGIKA(レジカ)の菊池さん曰く、「漫画家を志望する人は、『まずひとりで生計を立ててがんばってみよう』と考えることが圧倒的に多い。しかし数年間は努力できても、次第に孤独を感じてしまう」のだそう。

 古海さんはまさにその状況に直面したわけだ。どうやってこの孤独感を解消すればいいのか――彼女はさまざまな選択肢を検討するなかで、テレビ番組『マツコ会議』(日本テレビ系)で紹介されていた「多摩トキワソウ団地」のことを思い出す。

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 改めて多摩トキワソウ団地について調べた彼女は、「ここでならブレイクスルーできるかもしれない」と入居を決意。人生をかけて漫画制作に没頭するため、アルバイトも辞める。かくして、古海さんの多摩トキワソウ団地ライフはスタートした。

 

漫画の作風は『ゴールデンカムイ』や『極主夫道』に近い

 入居から数か月が経過した古海さんは現在、少年・青年向けの漫画雑誌での新人賞受賞を目指して漫画制作に取り組んでいる。新人賞を受賞すれば、雑誌内で連載を掲載できるチャンスが高くなる。そこまでのステージに到達できると、プロ漫画家としての道が一気に開けるのだという。ちなみに昨年応募した作品は、月次奨励賞を受賞。目標まであと少しというところだ。

 彼女は短編のコメディ作品をメインに描きつつ、時にストーリー作品も手掛けている。

「描いているストーリーは全然違いますけど、私の作風はコメディ系なら『ゴールデンカムイ』、ストーリー系なら『極主夫道』のイメージに近いですね。ギャグ漫画ほどではないけど、コメディ色が強い。線のタッチが太めで、男臭い作画なのも特徴です」(古海さん)

古海さんの作業机

 コメディタッチで少年漫画のような作風を描く彼女の漫画の原点は、幼少期まで遡る。物心ついたときから、アニメを見ることが好きだったという。