東京西部、つまり多摩地域に住んでいるからか、東京駅から夜遅い時間の東海道線に乗ることは滅多にない。ただ、先日たまさかそういう機会があった。そのとき、東海道線のホームで見かけてしまったのだ。「沼津行き」などという電車である。

 この沼津行きの東海道線、東京駅を22時25分に出発すると、2時間以上も走って日付も変わり、0時37分にようやく沼津駅に着く。沼津という駅は小田原も熱海も通り過ぎ、伊豆半島の付け根を横断した先にある。紛うことなき静岡県内の駅だ。それどころかJR東日本ですらなくて、JR東海の駅なのだ。

 だからなのか、さすがに沼津行きの電車はごくわずか。1日に数本しかない上に、大半が夜だ。もしもこの沼津行きの電車で深い眠りに落ちたなら。もうこれは、文字通りの悲劇の終着駅というほかない。

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 東京で働く神奈川県民にとっても、目が覚めると静岡県は沼津駅、絶望である。そんな悲劇の沼津駅、いったいどんな駅なのだろうか。

ふしぎな時間に走る東海道線“ナゾの終着駅”「沼津」には何がある?

ふしぎな時間に走る東海道線“ナゾの終着駅”「沼津」には何がある?

 沼津駅が終着の電車はほとんどないから、現実的に沼津を訪れようとすると三島駅で新幹線から在来線に乗り継ぐことになる。新幹線の圧倒的なスピードのおかげで、東京駅から沼津駅までの所要時間はざっと1時間。それくらいならば現実的な通勤圏内でもあるのだろうか。

 沼津駅には、東海道線に加えて御殿場線が乗り入れている。駅が開業したのは1889年のこと。

 はじめは箱根山の北を迂回する御殿場線がメインルートで、あとから伊豆半島付け根を貫くトンネルが開通して現在の形になった。沼津駅は、そうした中で箱根の山越えを控える拠点という位置づけで栄えたという。

今回の路線図。新幹線に乗ってしまえば東京から約1時間ほどで着いてしまう

 そんな時代の面影か、現在の沼津駅もどことなく“在来線の要衝”たる雰囲気を残している。構造そのものは地上に3面のホームが並び、おおむね東海道線の上り・下りと御殿場線で使い分けるシンプルなもの。

 

 それでも、ホームから東側にかけてはいくつもの留置線が並んで広がっていて、「鉄道の町・沼津」の面影を感じさせるのだ。

 ホームからは跨線橋を通じて南北の出入口に通じている。ただ、北口は後付けの出入口で、基本的には南口が沼津駅の“正面玄関”。南口側には駅ビル「アントレ」が併設されていて、跨線橋から直接駅ビル内に通じる改札口まである。