「沼津」という都市の何よりの個性は…

 ともあれ、沼津の町は城下町と宿場町が狩野川沿いに広がっていて、そこから北側に置かれた沼津駅に向かって市街地が広がっていったということになる。

 狩野川の対岸にはこれまた沼津のシンボルともいうべき香貫山が見え、その周囲はいまではすっかり市街地の中に呑まれている。

 

 中心地とて、大きなビルが並ぶザ・現代都市だ。それでも、沼津という町の核は長らく変わっていないのだろう。

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 ……と、ここで旅を終わらせてしまっては画竜点睛を欠く。

 沼津という都市の何よりの個性は、港町であることだ。沼津の港は駅やその南側の中心市街地からずっと下ったさらに南、狩野川の河口付近にある。

 

 深海水族館やら内港と外港を隔てる展望水門「びゅうお」などが名所になっていて、水揚げされた海の幸を食べさせる店が並ぶ一角もある平日の昼下がり、沼津港近くの商店街は観光客で引きも切らない賑わいぶりだ。

 かといって、沼津港はただの観光港というわけではない。水揚げ量では県内有数、水産加工でもアジの干物が全国で有数の生産量。

 駿河湾という好漁場に恵まれ、それでいて温暖な気候と強い浜風が引き締まった味の濃い干物を生み出しているのだとか。

 

 そして、かつてはこうした干物を含めた港の水産物を運ぶための線路もあった。沼津~沼津港間3kmを結んでいた小路線で、蛇松線という愛称を持っていた。

 実は歴史的には東海道線よりも(つまり沼津駅よりも)古い。1887年、はじめは東海道線用の資材を運ぶための路線として建設されている。