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「両親は『漫画家になるのは諦めたほうがいい』と…」愛知出身の24歳女性がそれでもプロ漫画家を目指して上京した“悲壮な覚悟”

多摩トキワソウ団地 #2

2022/09/25
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周囲の存在が気持ちの焦りや不安につながることも……

「自室にひとりでこもりすぎていると、集中力が落ちたり、ペースが緩んだりして続かないことがあります。ネームだけで1日をつぶしたり、1日に1~2ページしか描けなかったりするのです。だから、良いペースで描くためにも、周りとの触れ合いや、息抜きをすることも意識しています」(古海さん)

ひとりでの作業が続くと、集中力が落ちてしまうときもあるという

 しかし、ときに周囲の存在が気持ちの焦りや不安につながることもある。古海さんの暮らすフロアのユニット内には、彼女を含めた3人が入居中。古海さん以外の2人は、すでに短編作品の雑誌掲載歴があるのだ。

「フロアメイトの2人と話せば話すほど、『自分にはまだ掲載歴がないんだな』と自覚をさせられることもあります。やっぱり羨ましいですし、私も自分が描いた短編作品が掲載されたいと思ってしまう。

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 その思いをフロアメイトの2人に向けて素直に口にすることもあります。彼女たちは2人とも『いやいや。私なんてまだまだなんだよ』と謙遜するタイプで、私のことを気遣ってくれる。彼女たちの優しさには救われていますね」(古海さん)

 

「新人漫画賞の結果発表はあまり見ないようにしています」

 羨望の眼差しを向けてしまうのは、目に見える仲間に対してだけではない。目に見えない同志に、複雑な思いを抱いてしまうことも。

「新人漫画賞の結果発表はあまり見ないようにしていますね。目にしてしまうと『あ、この人こんなに若いのにもう受賞している……私は20代半ばなのに』と年齢を気にしてしまうこともあって……。自分の気持ちが揺らいでしまうので」(古海さん)

 将来への不安、焦り……古海さんはそうしたネガティブな感情とも向き合いながら、プロ漫画家としてのデビューを夢見て多摩トキワソウ団地での日々を過ごしている。