万太郎はヨソモノ扱いされることに落ち込むだけでなく、日本における植物分類学の基礎作りが遅々として進まないことに不安を覚えている。田邊教授は国の西洋文化普及にいっちょかみしていて(四字熟語が嫌いでいけ好かない西洋かぶれを要潤が好演)、植物分類学の構築は二の次という姿勢が透けて見えてきたからだ。田邊教授、ヤバイよ。万太郎を利用しているだけかもよ!
そう、ようやく「壁」が見えてきたのである。寝食削って汗水たらしても、目標に近づけない焦りと不安。万太郎の苦難の道が開けて、ちょっとホッとした。トントン拍子よりも、コツコツと積み上げるも花開かない悔しさが観たいんだよね。
神木は七転八倒がよく似合う
思えば、神木は宮藤官九郎作品における「なんだかうまくいかない男子」役が抜群だった。
「11人もいる!」(テレ朝・2011年)では貧乏大家族で空回りする長男役、映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」(2016年)では事故で落命、地獄に落ちた男子高校生が輪廻(りんね)転生に挑むという役どころ。インコやザリガニにしか転生できないもどかしさとおかしさったら。
七転八倒が似合うので、「どうか神木に受難を!」と思っちゃう。それが東京編で徐々に叶ってきたわけだ。
これから私が楽しみにしているシーン
万太郎には二つの希望がある。正確には、ふたりの愛する人がいる。
まずは、運命の女性で後に妻となる寿恵子である。浜辺美波が「明治のオタク女子(滝沢馬琴マニア)」として好演。しかも、ことあるごとに「女の選択肢」が突き付けられる、第2のヒロインでもある。
母親(牧瀬里穂)は元芸者で、妾だった設定。日の当たらない道を潔く選んだ母親に愛されて幸せに育ったが、うっかり自分も富裕層の実業家・高遠(伊礼彼方)にみそめられ、妾オファー(その前に戸籍ロンダリングで金持ちと養子縁組を打診)されてしまう。学会誌の創刊に必死な万太郎とはすれ違っていく。でもこれは序の口ね。相思相愛だから。たぶん結婚してからの困難や絶望のほうが期待できそうだ(困窮に苦しむのは寿恵子のほうかもしれないけれど)。