「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」
鼻血を垂らしながらエンターキーを叩く小磯健二=神木隆之介。この『サマーウォーズ』(09)の名場面をもって、神木隆之介が声優という境地を完全にものにしたと感じた人は多かったろう。
7月16日に「金曜ロードショー」で放送される『サマーウォーズ』。細田守監督の名を世に知らしめることになったヒット作だが、神木隆之介が声優としての才能を一気に開花させた作品でもある。
2歳でデビュー、子役のイメージを打破
1995年、2歳で子役としてデビュー。剣豪からナード(極めて内向的な文化系)まで演じられる実力派俳優、エポックメーキングなアニメ作品には欠かせぬ声優として活躍し、子役のイメージを打破したどころか、才能と魅力を拡張し続けている。その原動力の源、表現者として生きるうえでのテーマとなり、周囲から愛される性格を形作ったのは幼い頃から母に厳しく言われた3つの家訓だという。(※1)
雑誌やCMに出ることで成長を記録していけたらと考えた母親が、事務所に応募してデビュー。だが、その記録とは家族アルバム的な意味合いではなく、生後間もなく「生存の可能性は1%」の大病を乗り越えるも体の弱かった息子が“生きていた証”を残したいという切実なものだった。
玩具のCMに出演し、証を残せたと満足した母から「もう、(子役を)やめてもいいんだよ」と言われた神木は「現場で大人と話をするのが楽しかったので、『続ける』」と即答。(※2)「五十にして天命を知る」という言葉があるが、神木は生まれて数年で天命を知ったのである。