「『サマーウォーズ』から3作連続で、バケモノと、いわゆるショタキャラ(ローティーンまでの少年キャラ)が出てくると思うんですけど、これは監督が好きな要素なんですか?」

 これは2016年7月9日に早稲田大学で行われた「マスターズ・オブ・シネマ」のゲスト講師に招かれた細田守監督に対して、参加者の学生から投げかけられた質問である。ゲスト講師として細田守監督を招いたのは是枝裕和監督で、この内容は是枝裕和対談集『世界といまを考える 3』(PHP文庫)の冒頭に収録されている。

『おおかみこどもの雨と雪』より ©スタジオ地図

 直球といえば直球な質問である。細田守監督は苦笑しつつ、

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「動物に関してはよく『性的な意味はあるんですか?』と聞かれることはあるんです。世の中には『ケモナー』と呼ばれる人がいるらしくて、『監督も私と同じですか?』みたいな(笑)。でもそんなことを言えば、ピクサーだってディズニーだって、みんなケモナー仕様ですよね? なぜそこは突っ込まない?

(中略)動物というのはアニメーションと相性がいいはずなんですが、日本では残念ながら性愛的に解釈される(笑)。まあ、それはそれでひとつの楽しみ方のひとつだし、ありだとは思いますが」

 と答えている。

 続く回答で、細田守監督から興味深い言葉が語られる。

「僕は少女よりは、少年の方がおもしろい存在だと思っています。だからショタを描くというよりは、もっと別の意味合いで描いている。少女の場合は、その道の大家がいるのでね」

「少女の大家」=宮崎駿の長年の願い

 収録された書籍『世界といまを考える 3』上では、「その道の大家」の部分に*25という注釈がつき、章末で「映画監督・宮崎駿のことを指す」と説明されている。そんなにあからさまに説明して大丈夫なのかとも思うが、はっきり書いてあるのでまあ仕方がない。

『サマーウォーズ』より ©スタジオ地図

 1980年代の『風の谷のナウシカ』以降、宮崎駿の描く少女ヒロインはアニメーションにひとつの時代を作ってきた。10代の少女を主人公に物語を描くというのは、単に宮崎駿の作家性を超えて、いまや日本のアニメーションのお家芸になったと言ってもいいだろう。

 細田守監督が宮崎駿の影響を深く受け、かつてジブリの入社試験を受けた経験があることはよく知られている。だが作品上において細田作品は宮崎駿の「少女ヒロイン」路線を継承せず、少年を主人公に描く作品が多い。それはある意味では、宮崎駿に深く影響を受け尊敬するからこそという面があるのかもしれない。ファンによく知られるように、「少年を主人公にした物語を作りたい」というのは、宮崎駿の長年の宿願のひとつだからだ。