「お誕生日にポケベル買ってもらった。お誕生日はうれしい。ポケベルはうれしい、うれしい。さて、誰にベル番号教えようかな」
1996年、NTTドコモのポケットベルのCMに出演した少女は、どこか舌足らずなしゃべり方でこんなセリフを発した。ポケベルが誕生日のプレゼントとは時代を感じさせるが、90年代半ばの10代にはまだ携帯電話もインターネットも高嶺の花だったのだ。CMの少女は公園のタコ型滑り台に寝そべって鼻歌を口ずさんでいたかと思うと、いきなり滑り台から降りて駆け出す。そこへこんなナレーションがかぶさった。「あらら、いずこへ。広末涼子、ポケベル始める」――。
広末涼子はすでに1994年に「クレアラシルぴかぴかフェイスコンテスト」で優勝し、同ブランドのイメージキャラクターとしてデビューしていた。だが、彼女の名を一躍世に知らしめ、その人気に火をつけたのはやはりこのドコモのCMだろう。CMの反響は大きく、高校生のあいだではポケベルの売り上げが爆発的に伸びたという。当時、広末は15歳。この年の春には高校入学にともない郷里の高知から上京し、芸能活動を本格的に始めようとしていた。あれから24年が経ち、少女だった彼女もいまやベテラン女優となり、きょう7月18日、40歳の誕生日を迎えた。
コギャルの時代、ボーイッシュなルックスが新鮮だった
思えば、コギャルと呼ばれた女子高生たちがとかくメディアをにぎわせていたあの時代にあって、ショートカットでボーイッシュなルックスに、すれたところを感じさせない広末の登場はとにかく新鮮だった。そんな彼女に同世代の多くの男たちが心を奪われた。広末より4歳上の筆者も当時在籍したサブカル誌で、彼女にアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのコスプレで表紙へ登場してもらえないかと提案したことがあった(もっとも、当時はまだコスプレが市民権を得る前だっただけに、あっさり断られた)。
それからしばらくして、お笑い芸人の劇団ひとりをテレビで初めて見たとき、彼が将来の夢として広末涼子のために劇を書きたいというようなことを発言していて、「ここにも同世代がいる!」と思ったものだ。ちなみに、現在40歳前後となっているこの世代は、最近では「ヒロスエ世代」と呼ばれているらしい。