「フザケんな!」大騒ぎの早稲田初登校
「ヒロスエブーム」が最高潮に達したのは、1999年に彼女が早稲田大学教育学部に入学したときだろう。前年の受験時と合格発表、そして入学から3カ月目にして初めて登校したときには、マスコミや学生たちが殺到し大騒ぎとなった。初登校のあと、『週刊文春』のインタビューに応えた彼女は、《授業はすっごく面白かったです》と語る一方で、授業後に学生がどんどん集まるなかで触られたり引っ張られたりしたあげく、お尻を触られたことに、《もう『フザケんな!』って感じでした》と怒りをあらわにしている(※1)。
「カントが好きなんです」大学図書館によく通った
そんな広末が女優になろうと決めたのは小学生のとき。いずれ上京して学生をしながらオーディションを受けて芸能界を目指そうと、横浜にいる親戚宅に住まわせてくれるようあらかじめ頼んでおいたという。クレアラシルのコンテストは、オーディション雑誌で見つけて運だめしに受けたのだが、そこでいきなりデビューが決まってしまった。まもなくしてテレビドラマにも出演するようになり、高校在学中の1997年には『20世紀ノスタルジア』で映画初主演も務めた。早大に初登校した同月(1999年6月)には、高倉健との共演が話題を呼んだ映画『鉄道員(ぽっぽや)』が公開されている。翌月の19歳の誕生日には映画『秘密』がクランクイン、例年なら帰郷してよさこい祭りに参加するところを撮影に全力投球し、9月に公開にいたる(※2)。
女優以外の将来は考えていなかった彼女が、大学に進学したのは、《17、18歳で社会人になる勇気は持てなくて、延長線上でまだ勉強したいと思った》からだと、のちに明かしている(※3)。結局、大学は7年目で籍を外したが、そこで得たものは大きかったようだ。授業に出られなくても、大学の図書館はよく利用したという。とくに愛読したのが哲学書だった。それというのも、女優は感情を表現する仕事なので、そこからちょっと離れてみたいという感覚があったからだとか。その後もちょっと現実逃避したいときには、カントやソクラテスの本を読むことがあるらしい。2008年のある対談ではこんなことを語っていた。
《カントの『純粋理性批判』が好きなんです。判断や理性の限界がわかって。自分が理性的に論理的に答えを出そうとするときも周りの評価にとらわれるから、多数決的な考え方になると思うんですけど、多数決が社会的判断の中で一番民主的で優れているというのは、数学的には証明されていないんですよね》(※4)