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高谷が離脱……捕手難のソフトバンクを救うのは誰だ

文春野球コラム オープン戦2018

2018/03/02

 2年連続日本一を目指す福岡ソフトバンクホークスに立ちはだかる危機! 2人の捕手が春季キャンプ中、立て続けに離脱を強いられてしまいました。ホークス捕手陣では1番のベテランで、昨季92試合に出場した高谷裕亮捕手が、右肘の関節炎と診断され、27日に手術を受けました。復帰までは3ヶ月を要するとされています。今季も甲斐拓也捕手と2人で主に1軍でマスクを被ることが予想されていた上、若手育成のためにもベテラン捕手の存在は重要なだけに、チームには大きな痛手となりました。

 さらには今季の“第3の捕手”候補の筆頭として期待されていた栗原陵矢捕手が、高谷捕手の離脱直後、2月20日の練習で左肩関節前方脱臼。共に、開幕が絶望的な緊急事態となってしまったのです。そのため、1軍経験のある捕手はチームに甲斐拓也捕手のみとなってしまいました。春季キャンプ終盤は、B組も含めた若手捕手陣を紅白戦や対外試合に出場させたり、宿舎で首脳陣が捕手陣を集めての“捕手補習”が行われたりと、必死に現状打破へと向かっています。

 緊急事態と言われるのも当然なのですが、私は、こんな時だからこそ、新戦力の台頭を楽しみに戦況を見守りたいのです! ずっとファームで頑張ってきた、光り輝く可能性に満ちた若鷹に是非もっと期待して欲しいです。さあ、若鷹捕手陣よ! 今こそ、チームのピンチを自らのチャンスにする時だ!

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 もちろん、勝負の世界、そんなに甘くはないのは重々承知です。しかし、侍ジャパンの座まで上り詰めた甲斐捕手も育成出身。長年ファームで誰にも負けない努力をしてきたから、今があると思います。そんな這い上がる甲斐捕手の姿を間近で見てきて、「自分もやれるんだ」と奮い立って頑張ってきた捕手もいます! 日本一のチームで、チャンスは簡単に得られるものではありませんが、ここで大いなるアピールをして、チームを救うニューヒーローの誕生に私は期待します! そんなキラキラ輝くスター候補生たちを紹介します。

達川コーチから指導を受ける九鬼隆平(左)と栗原陵矢(右) ©時事通信社

長打の九鬼、安定の谷川原

 2年目の九鬼隆平捕手は、今春キャンプで初めてA組に抜擢されました。昨季がルーキーイヤーながら、「何かつかんで欲しい」という首脳陣の期待から、2軍戦で攝津投手、中田投手らベテラン投手とも試合で多くバッテリーを組み、九鬼捕手主導でサインも出し、経験を積んできました。

 秀岳館高校時代も、3年春夏共に甲子園に出場しベスト4。大舞台を踏んできたためか、プロ入り後も、その堂々たる姿から“ルーキー感”は感じられませんでした。的山2軍バッテリーコーチも「九鬼が入ってきて、周りの捕手陣が“もっと頑張らないと”となった」と話していましたが、早くも刺激を与える存在に……。性格的にも“根っからの捕手”というたくましき19歳。27日のロッテとの練習試合では、好送球で盗塁阻止に成功。昨季3軍で“本塁打王”を獲得した魅力の打撃も含め、もっともっと強気のアピールを期待したいです。

 一方、九鬼捕手とは性格的には真反対で、吉鶴1軍バッテリーコーチが“栗原タイプ”というおっとり系の谷川原健太捕手は、豊橋中央高校からドラフト3位で入団した3年目。たしかに、栗原捕手同様に天然感のある愛されキャラだし、プロ入り前には甲子園出場や代表経験などもないため、「変なクセがついていない」という“天然素材”なんです。

「肩も強いし、リードも面白い。経験を積ませていけば面白い存在」と以前、吉鶴コーチは話していました。昨季は右肘の手術で出遅れてしまいましたが、リハビリ期間中に人一倍取り組んできた下半身強化でズッシリたくましくなって実戦復帰。野球ができる喜びを感じながら成長の1年を過ごしました。キャンプ紅白戦ではバットでアピール。28日の楽天戦では盗塁阻止。顔つきも一気に凛々しくなりました。「長打の九鬼、安定の谷川原」と打撃面での期待も大きく、ポテンシャル高き3年目捕手にも期待です。

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