超高齢化社会にありながら、年齢だけを理由に高齢者を厄介者扱いする意見も少なくない。そう指摘するのは、精神科医の和田秀樹氏だ。なかでも、最もありえないのが「免許返納」に関する一連の反応だという。はたして、同氏がそのように訴えるのはなぜなのか。

 ここでは、和田氏の著書『わたしの100歳地図』(主婦の友社)の一部を抜粋。免許返納問題に関する主張を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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お仕着せの免許返納はありえない

 運転免許も超高齢社会だからこそ大切に考えたい権利の一つです。

 団塊世代を中心とする70代、80代の人たちは、現役時代には一生懸命に働き、間違いなく日本の高度経済成長を支えてきた世代にもかかわらず、世間では、高齢者というだけで厄介者として、「福祉や医療を圧迫する」「税金、年金をつぶす」というような言われ方をされています。あげくの果てに高齢者の運転は危険だと決めつけられて、「危ないからクルマに乗るな」「免許を返納しろ」など、そこまで言われても反論せずに、国や家族の言いなりになっておとなしく暮らしているようにわたしには見えています。

©AFLO

 自分事として、これから70歳、さらには80歳の壁も破って暮らしていくなかで、確かに免許の返納は考えなければならないと思っていますが、わたしが多くのメディアでさんざんお伝えしてきたとおり、日本の高齢者がさまざまな自粛を強いられているなかで、最もありえないと思っていることの一つが、この「運転免許の返納」なのです。テレビのニュースや新聞の記事で、高齢者ドライバーの事故が取り上げられるとき、事故原因の多くにアクセルとブレーキの踏み間違いを耳にする機会は皆さんも多いことと思いますが、世間の目は「高齢者」「踏み間違え」というだけで、認知機能や運動機能の低下によるものと決めつけて、高齢者の運転は危険であるということが刷り込まれています。これが、運転免許を自主返納する動きへとつながっているような気がしてなりません。