日本のおける100歳以上の高齢者数は、ここ10年でおよそ2倍となっており、「人生100年時代」の到来は、言葉だけではない現実の問題になっている。そんな中、どうしたって気になるのは健康についての問題だ。

 私達は患者として、どのように医師と向き合えばいいのか。精神科医の和田秀樹氏による『わたしの100歳地図』(主婦の友社)の一部を抜粋し、医療現場を知る同氏だからこそ語れる医師と患者の理想的なコミュニケーションについて紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

◆◆◆

ADVERTISEMENT

医師の言うことをうのみにしない

 最近、とある週刊誌の取材で、「医師に嫌われないように、医師が出した薬や手術案について、角を立てずに断る方法はありますか」という質問を受けました。

 残念ながら事を荒立てずにすむ方法はありません。そもそもほとんどの医師が自分の出した診断、考え方といったものを変えることはありませんから、患者が疑問に思ったり、こちらのほうが正しいと思ったりしても医師に忖度して何も言わなければ、軽くあしらわれてしまいがちです。角が立ってもいいから、『イヤだと思っている治療を押しつけるなら訴えるぞ』ぐらいの態度をとらないといけません。医師は訴えられると思ったとたんに態度を変えますよという話をしました。

©AFLO

 同様に、患者さんやその家族で手術の費用とは別にお礼を渡そうとする人がいますが、これは医師からすれば「手術を失敗しても大丈夫な患者だな」と思われてしまうかもしれないので、それよりは自分の病気や薬のことを少し勉強して「失敗したら絶対訴えるぞ」といったオーラを出しておけば、医師からは嫌われるかもしれませんが、そのほうがよほど医師は手を抜かず治療をやってくれます。

医師にも「ノー」を突きつける

 ご存じの方も多くいると思いますが、外科で手術を受けるときに、一般的には手術の危険性などを説明してもらい、双方が納得のうえ(インフォームドコンセント)で手術を受けることになりますが、わたしの経験上、内科医は、たとえば血圧の薬を出す際に、「その薬を飲むと頭がボーッとするよ」「ヨロヨロすることがあるよ」とは教えてくれませんでした。

 わたしたちは、医師にはもっといろいろな要求をしていいし、世の中にはたくさんの医師がいるのだから、一人や二人の医師に嫌われてもたいしたことではありません。