2021年10月31日、ハロウィーンで浮かれる東京を恐怖に叩き落した「京王線ジョーカー事件」。殺人未遂などの罪に問われていた無職の服部恭太被告(26)の初公判が行われた。男性を刺したことは認めたが、「(電車内にいた)男性以外が殺人未遂の対象になるかはわかりません」と起訴内容の一部を否認している。

 電車という誰もが使う交通機関での卑劣な犯罪の記憶を風化させないため、当時の記事を再公開する。(初出:2021年11月1日。年齢、肩書は当時のまま)

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「人をやっつけるジョーカーに憧れていた。犯行のための勝負服だ」

 警察の取り調べに対し、こう供述しているのは、自称住居不定、無職の服部恭太容疑者(24)。10月31日午後8時ごろ、東京都調布市の京王線布田―国領駅間を走行中の新宿行きの上り特急電車(10両編成)で座っていた70代の男性の右胸を刺し、ライターオイルをまいて車内に火をつけた。

ツイッターに投稿された服部容疑者(ツイッターより)

 車内は「キャー!」「落ち着いて!」などの悲鳴や怒号が飛び交う混乱状態に陥り、刺された男性のほか、中学3年生~70代の乗客の男女16人が、火災によるのどの痛みなどを訴え病院に搬送されたという。

ジョーカースーツはコスプレか私服か

 駆け付けた警察が服部容疑者を殺人未遂の現行犯で逮捕。SNSに投稿された服部容疑者の事件当時の服装が、緑色のワイシャツにネクタイ、紫のスーツ姿だったことから、SNSなどではアメリカのDCコミックス「バットマン」シリーズのジョーカーの服装に似ているという指摘があがっていた。

「犯行日がハロウィンだったこともあり、捜査員もコスプレかと疑ったようですが、服部容疑者は『私服だ』と否定。しかし一夜明けると、ジョーカーへの憧れを口にした。“ジョーカーをイメージした私服”ということのようです」(大手紙社会部記者)

乗客が逃げ惑う車内 提供:木村俊介さん(@siz33)

 “電車内での殺人”は、2019年に公開されたジョーカーが主役の映画「ジョーカー」を想起させるところもある。元々は心優しいジョーカーが不条理な世の中への不満をため込み、地下鉄で男たちに襲われた際に、持っていた銃で男たちを銃殺。そしてこの事件が悪の道へと突き進んでいくきっかけとなるのだ。

 服部容疑者は元々破壊願望があったのか、それともかつては心優しい人物だったのか。事件前の服部容疑者を知る人物らに取材をすると、意外な素顔が浮かび上がってきた――。