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「やはり上にはお兄さんの市川猿翁さんもいらっしゃいましたらから、お立場的にも主役を張るということはあまりなく、これまで主に脇役としてご活躍されていました。ですが実力は主役級の“バイプレーヤー”であったことに間違いなく、誰もが認める名役者です」

 市川段四郎さんは、3代目段四郎と妻で元女優の高杉早苗さんの次男として生まれた。1957年4月に初代市川亀治郎を名乗り初舞台を踏んだのち、63年5月に4代目團子、慶大文学部卒業後の69年5月に4代目段四郎を襲名した。

兄の猿翁とは対照的だった

 兄の市川猿翁さんが率いた一座では、スーパー歌舞伎から数々の古典の復活物まで幅広く活躍し、一座の“副将格”として澤瀉屋(おもだかや)を長く支えてきた。クラシックな芸風を生かし、存在感のある落ち着いた脇役を得意としてきた段四郎さん。その雰囲気は兄の猿翁さんとは対照的だったという。

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兄の市川猿翁(写真右から2人目)を支え続けてきたという段四郎さん(左から2人目)

「実は兄弟で一緒に芝居するというのは歴史を振り返っても難しいことなんです。やはりお互い技量が拮抗していることも多く、様々な事情で仲たがいしてしまうこともあります。ですが猿翁さんと段四郎さんはそれぞれ個性があり、“陰と陽“”白と黒“くらい正反対のタイプの役者だったので、またそれがよかったのだと思います。

 線が細い感じだった兄の猿翁さんとは対照的に、段四郎さんは小柄ですが、野太く、ある意味“男くさい”男芸を得意とされていました。『スーパー歌舞伎』を手掛けた猿翁さんはどちらかというと実験主義的でしたが、段四郎さんは古典歌舞伎も重要視されていました」

 段四郎さんの兄、そして猿之助さんの伯父でもある猿翁さんが始めたスーパー歌舞伎は、宙乗りや早変わりなどを取り入れた現代風な演出が特徴。猿翁さんが2003年に脳梗塞で倒れて以降、猿之助さんがスーパー歌舞伎を引き継ぎ、「スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)」として「ワンピース」や「新版オグリ」などを手掛けてきた。