27日、家族3人の一家心中を図ったものの、ひとり死にきれなかった稀代の歌舞伎役者・市川猿之助(47)がついに逮捕された。容疑は亡くなった両親のうち母親に対する自殺ほう助の疑い。

 歌舞伎界を揺るがした史上最大の事件は果たして全容解明に至るのか。

 猿之助を育て上げ、また自身も名優として梨園に大きな足跡を残した、市川段四郎さんを悼んだ当時の記事を再公開する。(初出:2023年5月19日。年齢、肩書は当時のまま)

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 歌舞伎役者の市川猿之助さん(47)が18日、東京・目黒区内の自宅で両親とともに倒れているのが発見され、救急搬送されるという前代未聞の事件が発生した。

猿之助さん宅 ©️共同通信社

 父親で歌舞伎役者の市川段四郎(本名・喜熨斗弘之)さん(76)と母親の延子さん(75)は病院に搬送されたが、その後死亡が確認された。猿之助さんの命に別条はないが、当初は会話ができる状態ではなかった。

段四郎が嫌いな好劇家などいない

 自宅からは猿之助さん自筆の遺書が見つかるなど、心中を図った可能性もあり、警視庁は詳しい状況を調べている。

写真右から市川段四郎、市川猿之助、市川猿翁、市川團子、市川中車 Ⓒ文藝春秋

 段四郎さんは近年、体調が芳しくなく舞台から遠ざかっていたなかでの突然の訃報。事件の全容は未だ謎に包まれたままだが、突如として亡くなった段四郎さんの才能を惜しむ声が上がっている。

「『段四郎が嫌いな好劇家などいないのではないか』と思うくらい、市川段四郎さんはいい役者で、尊敬していました。今回の事件に驚くとともに、残念でたまりません」

 こう語るのは、明星大学人文学部日本文化学科教授で演劇評論家の村上湛さんだ。