3位は親子関係、2位は進路に関する悩み…子どもや若者が自殺に追いやる「1番の理由」とはいったいなにか?
和光大学教授で、臨床心理士の末木新氏の新刊『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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子ども・若者が自殺を考える理由
子ども・若者が自殺を考える理由についても簡単に統計資料を挙げておきたいと思います。
表2は、文部科学省がまとめた「コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について」という資料です。令和元年はコロナ前、令和2年はコロナ発生以後ということになります。
表を見れば分かるように、児童・生徒が自殺を考える理由は新型コロナの流行によって多少の影響を受けたものの、昔から、大きくは学業や進路に関する悩みと、親や家族との関係の不和の2つです。これについては大きな変化はありません。もちろん、凄惨ないじめによって自殺に追い込まれるという事例もありますが、児童・生徒の自殺の大半はそのようなものではありません。
我々が子どもの自殺と言われた際にいじめを連想してしまうのは、メディア報道の影響です。人間の性でしょうか、学業不振や家族との不和で自殺が生じても、我々はテレビに釘付けにはなりません。ネットで詳細を検索しようとする人も稀でしょう。そのため、大半の自殺が報道されることはありません。
一方で、凄惨ないじめによって自殺が発生したといったことがあれば、我々はその件についてテレビを見たり、ネットで詳細を調べたりしようとするでしょう。数字(例:視聴率、PV)が取れるのでメディア上での扱いは加熱し、我々はその報道により熱中していきます。