2月24日夜。古谷拓哉氏は自宅のリビングでテレビにくぎ付けになっていた。イギリスとの3位決定戦に臨んだカーリング女子日本代表が5-3で勝利をおさめ、銅メダルを獲得すると我が事のように喜んだ。昨年オフに現役を引退し球団の営業マンに転身した同氏は北海道の北見市出身。女子日本代表メンバーが所属するLS北見の拠点でありカーリングのメッカであるだけに人一倍応援に力が入った。

北海道北見市出身の古谷拓哉氏 ©梶原紀章

「めちゃくちゃ誇らしいですね。ハーフタイムでのモグモグタイムが話題となっていましたが、あの時、皆さんが食べていた赤いサイロというチーズケーキは地元では有名で、自分もよく食べていた。ああいうのがテレビで紹介されているだけでも感動しました」

 地元の女子たちの活躍に勇気をもらった気がした。今年から始めた慣れない営業マンとしての日々。1週間はあっという間に過ぎ、土日は唯一、心を休められるときだ。「日曜になると、ああもう休みが終わってしまうのかと思ってしまいますよね」と苦笑いする。そんな土曜の夜に観戦したカーリング女子日本代表の快挙に、同じ北海道北見出身として勇気をもらった気がした。月曜日からまた営業マンとしてアポをとり、商談に向かうエネルギーが湧いてきた。

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 時を同じくして嬉しい事もあった。週明け月曜日に球団事務所に顔を出すと商談成立の申込書が届いた。公式戦の冠協賛社となるマッチデースポンサーを探していたところ、現役時代の知人を通して紹介された企業が手を上げてくれたのだ。人生で初めて成立した大型案件。申込書を目にすると、手が震えた。そして周囲への感謝の気持ちが湧いてきた。

「嬉しかったです。でも一人の力ではない。現役時代にお世話になった方に紹介いただいて、話が進んだ。4月と9月の2試合でマッチデーを開催していただけるということになりました。本当に自分の力ではなく周りの支えと営業の先輩や上司のアドバイスがあってのこと。カーリングと一緒でチームプレーです」